外国人経済研究所

外国人と経済の関係を解き明かしていきます。

タグ:経済政策

l  愚かな経済政策は、経営者に過度な負担をかけ、死に至らしめます。直近で言えば、「働き方改革」とか「最低賃金の毎年引き上げ」ということになるのだと思います。経済と経営のメカニズムを熟知しない素人たちが、万人受けを狙って、「残業時間を減らして、時給を上げれば、生産性が向上して、経済は良くなる」という宗教を流行らせて、法律まで作ってしまいました。

l  その結果はと言えば、大企業の「働き方改革」を実現させるために下請企業で残業が増え、1人で対応していた仕事に2人貼り付けて生産性が下がり、部下を定時で帰らせて独りで残務を仕上げる管理職が苦しみ、仕事に燃えて残業したい若手を無理やり帰らせてしまうという喜劇を演出。

l  最低賃金を引き上げれば経済は良くなるという宗教を唱えるエコノミストは、韓国がそれで失敗したことを知ると、「韓国は賃上げ速度が速すぎた」と弁解。生産性の向上を上回る賃上げは経済にマイナスであることがはっきりしたのに、「日本は毎年5%賃上げすべき」と断言。日本の生産性向上が年5%を超えていたことなど、高度成長期の一時期しかないのですが・・・。

【Timely Report】Vol.377(2019.3.28)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事「アベノミクスには期待できない!」も参考になります。

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l  611日、安倍政権は、「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」の素案を公表し、今年10月に消費税率を10%に引き上げると明記しました。自民党も、同じ内容を参院選のマニフェストに書き込みましたから、一時期盛り上がりを見せた「消費税増税延期策」の可能性は極めて低くなりました。

l  景気の足元は極めて弱く、税率引き上げ時に通常見られるはずの「駆け込み需要」すら見られないのではないかという雰囲気が漂い始めました。誤った経済政策の効果により、倒産件数も着実に増加してきました。

l  アベノミクスは、結局のところ、①物価を上げれば景気は良くなる、②労働時間を短縮すれば生産性は向上する、③最低賃金を上げれば生産性が上がる、という3つの誤った思い込みで成り立っている「邪教」にすぎませんでした。だから、日本経済が健全な成長過程に戻ることはなかったのです。その上に、消費税増税をすれば、景気の腰折れでは済まず、不況を招きかねません。このまま、消費税増税を強行すれば、類似の経済政策で大失敗した韓国に学ばなかった愚かな政権として、歴史に名を刻むことになるでしょう。残念です。

【Timely Report】Vol.465(2019.8.8号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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l  経済政策は、ここまで述べてきた経営の実態を含んだ「経済メカニズム」を十分に理解していないとうまく機能しません。ここでいう「経済メカニズム」とは、①企業運営の実際と経営者の行動や心理、②労働者の行動や心理、③消費者の行動や心理、④それらすべてをひっくるめた物価や賃金を決定する市場メカニズムの機能、⑤企業運営の実際と市場メカニズムの機能とのフィードバック、のことを指します。残念ながら、学者たちは④の表面しか語れず、せいぜい②と③を付け足して終わりというケースがほとんどです。

l  しかし、本当に日本経済を改善したいのであれば、①~⑤のすべてを含めて現状を的確に分析し、適切な経済政策を講じなければ、政策は有効に機能しません。そして、既に導入した諸政策に関しても見直す必要があるのであれば、正しく訂正する必要があります。その意味で、現在の経済政策については、手直しすべきところが多々ありますが、中でも、今後の日本経済に多大な影響を与え得るという点で懸念されるのが「働き方改革」です。その中でも、20194月(中小企業は20204月施行)に施行される「時間外労働の上限規制」(月45時間かつ年360時間が上限)は、刑事罰(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)まで導入しているので、ひとつ間違えば、「韓国の悲劇」(後述)を後追いすることになります。

l  まずは、現実を直視しましょう。従来、暗黙裡に想定している「向上心があって、勤勉で、ハードワークを厭わない日本人」という仮定を捨てて、「上昇志向はなく、プライベートに熱心で、ハードワークを厭う日本人」しかいないと考えてみてください。その環境下で、「労働時間を減らせば、労働生産性は向上する」という短絡的な思考で展開されている「働き方改革」が、どのように機能するかを想像してください。かつてのように「向上心があって、勤勉で、ハードワークを厭わない」人材ばかりなのであれば、確率は低いとは思いますが、百歩譲って、「時間短縮➡創意工夫➡生産性向上」という可能性はゼロとは言いません。しかし、「労働力劣化」が進み、「上昇志向はなく、プライベートに熱心で、ハードワークを厭う」という性質に変質していたとすれば、生産性向上が起こる可能性はゼロであり、時間短縮により、生産力劣化や生産量過少が発生することが明らかです。もっと言えば、何か不満があれば、労働基準監督署や悪徳弁護士に駆け込み、「法令違反」だと喚き散らす輩を増殖させるだけでしょう。ヒドイ企業があることは否定しませんが、クレーマー的な労働者がいることもまた事実です。

l  「上昇志向はなく、プライベートに熱心で、ハードワークを厭う」という労働者が無視できない数になっている中で、時間短縮により生産性が向上する可能性はありません。企業運営を困難化させるだけです。無論、経営者が労働者の能力や生産性を向上させることに匙を投げて、省力化投資やAIなどの機械化に走る可能性は否定できません。しかし、その経営行為は、「労働者の排斥」であって、「労働者の生産性向上」ではありません。

l  この点も、十分に理解せずに空論を唱える論者が多いので指摘しておきますが、賃金と生産性の関係でいえば、労働者の賃金が上昇するのは、「労働者の生産性」が向上したときであって、省力化投資による機械化によって「会社の生産性」が向上したときに、「まず労働者に配分すべき」と考える経営者はいません。無論、「会社の生産性」が向上したため、労働者の賃金を引き上げる余裕が生まれる中で、労働需給が逼迫していることを勘案して、賃金UPに同意することはあるでしょう。しかし、機械化によって「会社の生産性」が向上したときに、経営者が真っ先に考えるのは、機械のメンテナンスや劣化防止や性能向上であって、賃金UPではありません。生産性の向上をもたらしたのは「機械」であって、「労働者」ではないからです。

l  今でも、「賃金が上がらないのは、人手不足が足りないから」という誤診をしている論者は少なくありませんが、現状は、需要増に牽引される「好景気」ではなく、単なる「人手不足」。需要が弱いから値上げしたらお客さまは離れるだけです。それを熟知しているから、経営者たちは「人手不足➡賃金上昇➡価格上昇」という針路ではなく、時短や休業という「労働投入量の減少」を選び、「人手不足拡大抑制賃金抑制縮小均衡」という針路をとっているわけであり、そういう中で、労働力の減少を補うために省力化投資を行う企業は、いずれ増えていくと思われます。しかし、機械化により「会社の生産性」が向上したからと言って、それが賃金UPにストレートに反映されるわけがありません。労働者自身の生産性が向上したわけではないからです。

l  経営者の立場から見れば、賃金の上昇は、あくまでも「労働者の生産性」の伸びの範囲内にとどめられるべきものであって、労働者自身の努力や生産性向上なしに賃金上昇などあり得ません。ところが、マスコミにおける議論は、「労働者自身の生産性」の話なのか、「機械化による生産性向上」の話なのかがわからない。じっくり聞いてみると、日本共産党のように、「これまで企業は搾取してきたのだから労働者に返せ」みたいな議論だったりします。生産性向上と賃金に関する議論は、厳密に場合分けした上で論じるべきです。

l  日本が「働き方改革」を本格的に実施する前に参考にしておくべき経済事象として、「韓国の悲劇」を紹介します。「経済メカニズム」を無視して、経済政策を実施すると、手痛いしっぺ返しを食うという良い見本です。韓国の文在寅政権は、「所得主導成長論」を掲げて、「賃上げすれば景気は良くなる」という前提で経済政策を運営しました。元々、支持基盤の労働者層への支援として、「2020年最低賃金1万ウォン」を公約に掲げ、日本を上回る最低賃金(約1000円)に引き上げることを約束して、文在寅氏が政権奪取を果たしたという経緯があります。この約束を無下にすることはできません。

l  実際、最低賃金の引き上げは急ピッチで実施されました。2010年に4110ウォンだった最低賃金は、毎年68%ずつ上昇し、2017年には6470ウォンに。これだけでも中小企業にとっては軽くない負担増でしたが、文在寅政権発足以降、2018年に16.4%上昇(7530ウォン)。さらに2019年には、これが10.9%上昇して、8350ウォン(約835円)にすることになりました。その上、今年の71日からは労働時間の上限を、残業を含め週52時間に短縮することを柱とした改正勤労基準法も施行。従業員300人以上の企業等に適用され、2021年までに中小企業にも適用します。まるで安倍政権の「働き方改革」を先取りしたのではないかと思いたくなるほど酷似しています。

l  しかし、その結果、最低賃金の引き上げと労働時間の週52時間制で零細企業と自営業者らの経営は委縮し、少なからず破綻しました。韓国の銀座と呼ばれる明洞でも店舗の閉鎖が加速し、雇用の縮小を招いています。経営者たちは、「美容室の経営者も月200万ウォン(約20万円)を稼ぐのが難しいのに、最低賃金が上がり、洗髪もまだ慣れていない補助職員に多くの時給を支払わなければいけない」「今年の最低賃金が16.4%も上がり、職員1人を解雇した。代わりに肩の手術を昨年2回も受けた父が朝から手伝っている」「昼食時間の商売だが、120皿ほど売っていたのが今は7080皿しか売れない。こういう状況で最低賃金を上げるのは商売をやめろと言うのと変わらない」「すでに自動車産業など一部製造業の正規職の賃金は日本企業よりも高い。これ以上、人件費が上昇すると、どうやって競争力を維持するのか」などと口々に叫びました。野党は、これに呼応し、「自営業者はすでに死にかけているが、薬を与える考えはなく、政府は信じて待ってほしいという言葉を繰り返している」「国民の生活を改善するためには、商売がうまくいって売り上げが増えなければいけない」「与党に警告する。現場に答えがある。出てきて耳を傾けるべきだ」と批判しました。自民党も気を付けるべきです。

l  2015年~2017年の3年間、月平均の「就業者増加数」は概ね30万人でしたが、2018年の16月の平均は142000人と半減。業種別に見ると、「卸小売業」「宿泊飲食業」「施設管理業」で就業者数が大幅に減少しており、1月の最低賃金引き上げ後、職を失う例が多く見られました。就業者増加数は、78月には2カ月連続で1万人を下回り、失業者も増加。7~9月期の月平均失業者は、前年同期より102000人増えた1065000人で、通貨危機の後遺症に苦しめられた1999年に1332000人を記録してから最も多い数になりました。7~9月期に失業者が100万人を超えたのは19年ぶりです。さらに、不況の中の物価高(スタグフレーション)が進んでおり、農産物、外食費、ガソリン代などの価格が全般的に上昇しています。

l  9月の鉱工業生産指数は前年比▲8.4%と不振。9月の設備投資指数も前年比▲19.3%と急降下。「景気はピークを越え下振れリスクが強まった」とみるエコノミストが増えています。文在寅政権は、大企業や財閥主導で経済のパイ全体を拡大させるこれまでの経済政策とは一線を画し、「賃上げ➡消費拡大➡企業業績向上➡投資拡大」という経路を目論んでいました。ところが、最低賃金が一気に上昇しため、雇用主は、人件費を抑えるため「雇用削減」に踏み切ります。大幅に引き上げられた「最低賃金」を守るために、雇用する従業員を1人、2人と減らすことで対応したわけです。「所得主導の成長」どころではありません。最低賃金で働く従業員同士で「雇用」の奪い合いが起き、全体として雇用は減少しました。これが誤った経済政策の帰結です。

l  自営業者や中小企業は、最低賃金を来年時給8350ウォンにすると決めた政府に猛反発。8月末には3万人のデモを決行し、経営の現場を無視した政策の撤回を求めました。「最低時給1000円」を掲げる「所得主導成長論」が想定していた「賃金増消費増業績好転雇用増」というシナリオは実現せず、「賃金増雇用減消費減業績悪化」に陥っています。この事態を重く見た文在寅大統領は、119日に「所得主導成長論」を主導してきた金東兗・経済副首相兼企画財政相と張夏成・大統領府政策室長の2人を更迭しました。経営の現場を無視し、「物価が上がれば景気は良くなる」「時短をすれば生産性は上がる」「人手不足になれば経済は良くなる」という勘違いの中で、誤った賃上げ政策や「働き方改革」が処方されたならば、経営の現場が疲弊するのは必至です。それは、韓国でも、日本でも変わりません。ちなみに、「ベネズエラの大惨事」(後述)を見た韓国の主要紙は、「韓国もベネズエラの二の舞になる」として文在寅政権の経済政策を大批判しています。

l  「経済メカニズム」を無視して経済政策を実施すると手痛いしっぺ返しを食った1998年の事例として、ベネズエラもご紹介しましょう。1999年に就任したチャベス大統領は「21世紀の社会主義」を掲げました。革命実現のため石油会社のPDVSAに対し国庫への拠出を増やすよう求め、経営の独立性を保ってきた同社と衝突し、200212月にはPDVSAを中心とするゼネラルストライキに発展。約2カ月に及んだストは失敗し、チャベス政権はストに参加した職員約2万人を解雇しました。全職員の半数におよび、経営経験が豊富な幹部や専門技術を持った職員が去りました。チャベス政権は「革命」に忠実な軍人や政治家ら「政治任用組」をPDVSAに送り込み、職員は10万人以上に膨れ上がりましたが、技術的・専門的な知識はありませんでした。

l  チャベス政権は、富裕層が独占していた富を国民の7割を占める貧困層に分配します。PDVSAから吸い上げた1000億ドル(10兆円)以上の巨額資金を社会政策に充てました。ベネズエラの輸出に占める石油分野の割合は9割になり、国家歳入に占める割合は5割にまで上昇し、石油依存が強まります。貧困層向けの無償住宅建設や無料診療所開設、格安の食料販売などを推進、貧困率や識字率も改善させました。その結果、貧しい人々を中心にチャベス大統領の人気は絶大なものになりました。チャベス氏の後、マドゥロ氏が大統領に就任すると、1バレル=100ドルを超えていた原油価格は、2014年から下がり始め、2016年には1バレル=40ドルに下落し、外貨が獲得できなくなりました。PDVSAは傘下企業への代金の支払いができなくなり、企業の撤退が相次ぎます。ベネズエラの原油は「超重質油」と呼ばれ、製品化のためには軽油と混ぜる必要があるのですが、外貨がないので軽油の輸入が難しくなり、原油の生産量が減少します。それが、PDVSAの経営難を惹き起こし、ベネズエラ経済を悪循環に陥らせました。

l  食料や生活必需品の不足など経済混乱が深まり、物価は急騰し、貨幣経済は崩壊しました。海外からの食糧や燃料、医療品の輸入はままならず、低い生活水準はさらに悪化。国の保健当局に予防や治療のための資源がないため、麻疹やマラリアも流行。首都カラカスのスーパーでは、牛乳やパスタが月給並みの値段で売られており、庶民には手が出ません。政府はデノミを断行し、クーポン券を発行しましたが、財政赤字を中央銀行がファイナンスしているだけなので、ハイパーインフレが悪化し、1カ月で物価が2倍になる勢い。インフレ率は年内に100万%に達するという説も。このため、ベネズエラから海外に脱出する難民は後を絶たず、周辺国にも悪影響が及んでいます。

l  1999年当時、ベネズエラは世界最大の石油埋蔵国にふさわしく豊かな国でした。しかし、原油収入を無尽蔵と考えた政府やハードワークを厭う国民は、経済メカニズムを軽視して、「宗教」に似た「社会主義」に突き進みます。石油を売って得た資金を持続可能な「経済メカニズム」を構築するために使わず、最低賃金の引き上げ、労働時間の短縮、無償福祉、公務員の増員という支出に回してしまいました。バラまかれた資金は投資・生産・雇用に結びつかなかったため、原油安で石油収入源が減ると財政が危機に陥り、貨幣を刷って国債を乱発。それで物価が上がると、市場価格を抑え、民間企業が破産すると国有化。今年5月、朝食の75%を供給してきた米国のシリアル会社ケロッグが工場閉鎖を宣言すると、マドゥロ大統領は「政府が没収して労働者の手で運営する」と宣言。支持した労働組合・学生・農民・原住民勢力は歓喜しましたが、シリアルが生産されることは二度とありませんでした。これが「経済メカニズム」を無視した報いです。

l  日本のあるエコノミストは、「現時点で日本は、ベネズエラとは違って外貨を稼げる企業がまだ数多くあり、経常収支は黒字だ。よって、当面はベネズエラの状況とは異なるのだが、財政赤字を日本銀行がファイナンスし続けることの危険性は意識する必要がある」と指摘しています。現時点において、日本経済に「ベネズエラの大惨事」が襲い掛かる可能性があるとは思いませんが、先に述べた「韓国の悲劇」でも明確に示されているように、「経済メカニズム」を無視した経済政策は、いずれ「経済メカニズム」から手痛いしっぺ返しを必ず食らいます。この大原則は、韓国やベネズエラだけにだけ適用されるのではなく、日本経済でも作用します。そして、日本政府は、未だに「物価が上がれば景気は良くなる」「時短をすれば生産性は上がる」「人手不足になれば経済は良くなる」などという「宗教」を信仰し、「経済メカニズム」を無視した経済政策を展開し続けています。

l  極めて重要なので繰り返して指摘しておきますが、「経済メカニズム」とは、①企業運営の実際と経営者の行動や心理、②労働者の行動や心理、③消費者の行動や心理、④それらすべてをひっくるめた物価や賃金を決定する市場メカニズムの機能、⑤企業運営の実際と市場メカニズムの機能とのフィードバック関係、のことを指します。これら①~⑤の観点すべてを踏まえた上で、適切な経済政策をタイムリーに講じない場合、「韓国の悲劇」は日本においても十二分に起こり得ます。最悪の場合、「ベネズエラの大惨事」だって、日本で絶対に起こり得ないとは言い切れないのです。
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【Timely Report】Vol.320(2019.1.4)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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l  近年、日本の経済政策は、荒唐無稽なものに成り果てました。「物価を上げれば、景気は良くなる」という宗教が失敗し、「労働時間を短縮すれば、生産性は向上する」という戯言がとんでもない誤りだと気付きつつあるにもかかわらず、今度は、「最低賃金を上げれば、生産性が上がる」という邪教を広めようとする宣教師たちが増えています。最低賃金を引き上げて、経済を悪化させた韓国の失政を見れば明らかなのに、「最低賃金を毎年5%引き上げて、うまくやれば大丈夫」という根拠不明のご託宣を垂れ流しています。

l  宣教師の一人は、自書で「私は文化財の補修を営む会社の社長を務めていますが、文化財業界は小さい企業があまりに多く、ゼネコンは小さい企業同士を過当に競争させ、小さい企業は泣き寝入りを強いられています」と書き、競争相手が多過ぎるから小企業は潰すか統合してしまえ、と主張しています。こんな低俗なアジテーションに乗せられるのは、あまりにも幼稚。OECD諸国では、最低賃金を上げても労働供給への影響はなかったという実証研究も公表されています。経済政策は宗教ではありません。

【Timely Report】Vol.404(2019.5.14号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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l  遅ればせながら、あけましておめでとうございます。平素、全国外国人雇用協会の活動にご理解をいただき、感謝しております。今年もよろしくお願い申し上げます。今号は、新春でもございますので、普段のTimely Reportと趣向を変えて、2018年において、日本経済がどう展開するかという点について、報道や統計などの事実を踏まえながら、当協会による予測情報をお届けいたします。皆さまの経営のご参考になれば幸いです。

l  まず、足元の日本経済を確認しますと、201711月時点における完全失業率が2.7%と24年ぶりの低水準になったことや、有効求人倍率が1.56倍と44年ぶりの水準に上昇したこと、さらに加えて、新規求人倍率が2.37倍で過去最高となったことが端的に表しているように、日本国内は完全雇用の状態になっており、経営者や雇用者からみると、「人手不足」は危機的な水域に入っています。

l  こうした中、多くの経営者や雇用主の主たる関心は、「売上拡大」や「新規市場への進出」という攻めの一手ではなく、「円滑な採用」「離職の抑止」「雇用トラブルの回避」という守りの諸施策に向かっており、「安定的で健全な人手の確保」という「生き残る企業であるための不可欠な経営基盤」のディフェンスに費用と時間を割き、雇用問題に日々心を砕かざるを得ない環境に置かれています。

l  ところが、政策当局者らは、この単なる「人手不足」を、「アベノミクスの成果」として自画自賛し、「成功事例」としてのプラス面しか見ようとしていません。しかし、その実態は、「少子高齢化の加速と働き盛り人口の減少」にもたらされた表層的な現象にすぎないのです。政治家としてのポジショントークであれば理解できるとしても、経済政策を立案し実行する立場の政策当局者自身が、これから少なくとも半世紀は続くと見られる日本人の人口構成の推移がもたらしている構造的な「人手不足」を、「自らの政策効果の発現」として高らかに吹聴しているようではお先が知れています。

l  実際に、現実に適用されている経済政策は、「物価が上がれば、景気が良くなる」という、もはや宗教の域に達した思い込みに基づいており、「demand-pull(需要が増大することによる物価上昇)」と「cost-push(コストが増大することによる物価上昇)」の違いを峻別することすらなく、物価上昇を追い求める「インフレ教」に堕落しています。

l  需要が増大し、売上が増大する中で、消費者に値上げが許容される経済の地合いであれば、利益の増大に伴って賃金上昇のコストも吸収されていく筋合いにありますが、デフレ経済に慣れてしまった消費者が値上げに「NO」と言い続ける中で、経営判断としての値上げは極めて困難です。そういう状況下、海外市場に活路を求めることができる大企業はともかくとして、国内市場にしか拠る術がない国内企業においては、賃金上昇のコストアップが企業体力を着実に蝕んでいます。

l  201779月のGDPを見ても、国内市場の大きさを示す「民間最終消費支出(名目・持ち家の帰属家賃を除く)」の前年比は+1.0%にすぎず、実態的には、前年度における落ち込みを取り戻したに過ぎません(201679月前年比▲1.1%)。国内市場が活況を呈していないことは、201579月に73.6兆円だった「民間最終消費支出」が201779月になっても73.6兆円にとどまっているという事実が雄弁に物語っています。念のため、直近1年間の前々年比を示せば、20161012月+0.1 ➡ 201713月+0.1 ➡ 46月+0.8 ➡ 79▲0.0%ですから、一向に増大していないことが確認できます。

l  そんな中で、労働生産性を向上させる議論に至っては、「労働時間を減らせば、労働生産性は向上する」という明らかに誤った小学生レベルの算数を、政策当局者らが恥ずかしげもなく公言しており、「労働時間の削減=労働生産性の向上」という恒等式を呪文のように唱える姿は滑稽でもあり、空恐ろしくもあります。

l  確かに、労働によってもたらされる企業の付加価値(≒粗利益)が、労働時間の投入量にまったく左右されないのであれば、労働投入量を削減すればするほど、労働生産性は上昇します。しかし、その論理は、家に帰ってから、毎日4時間猛勉強した結果、70点だった試験の点数を77点に引き上げた(10UP)子供に対して、「これからは毎日2時間だけ集中して勉強しなさい」と指導すれば、「これまでの半分(4時間➡2時間)の勉強時間だから、10UP2倍の20UPになって、試験結果は84点になるはず」と妄想することと同義です。

l  勉強しなくなれば、その分成績が落ちるだけというのは自明の理ですから、「労働時間の削減=労働生産性の向上」という呪文は、「労働投入量の不足による諸問題の表面化」という呪いになって、いずれ企業や経済のパフォーマンスに跳ね返ってきます。
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