外国人経済研究所

外国人と経済の関係を解き明かしていきます。

タグ:経営

l  日本語教育機関6団体による調査では、全国208校に4月入学を予定していた留学生は13,700人。約1,000人(8%)が入学を辞退し、11,600人(85%)が入国待ち。今春の新入生がゼロの学校は86校に上ります(7割超が1割以下)。日本語学校で学ぶ留学生は、2018年度に10万人を超えましたが、5~6万人にまで半減。3割が「経営に支障がある」状態です。800行にまで膨れ上がった日本語学校バブルの直後だけに、深刻な影響が懸念されます。

l  コロナショックの直撃を受けた観光業並みの惨状だと言ってよいでしょう。しかも、観光業のように、政府が「GO TOキャンペーン」を展開してくれるわけでもなく、自然淘汰に任せるという感じです。粗悪な日本語学校が少なくないことは事実なのでしょうが、何も手を打たなければ、良心的で良質の教育を提供していた先も大量破綻してしまいかねません。

l  将来を見渡せば、「日本語教育」というインフラが重要になることは必至。日本語教育推進法で所管官庁となった文部科学省が立ち上がるべきなのですが、大学や専門学校を守ることに必死で、とても手が回らないようです。

Vol.693(2020.7.14号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

  BLOG記事「経済政策:ロボ酒場のレモンサワーは高い?」も参考になります。
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l  経営の現場を知らない経済学者の中には、「人手不足なのに賃金が上がらないのはなぜだ?」と悩んでいる人々が少なくありません。そのため、「ただでさえ賃金が上がっていないのに、こんな状況下で外国人労働者を入れると、賃金が上がらなくなってしまう」と騒ぎ始めた輩もいます。

l  しかし、就業者1人当たりのGDPを眺めると、2000年度820万円➡2005年度824万円➡2010年度794万円➡2016年度830万円➡2017年度820万円ですから、労働生産性が上がっていないという事実を簡単に確認できます。リーマンショック後の回復期で見ても、年率換算するとたかだか年+0.4%程度の向上。2000年からの17年間で見ると、生産性向上はほぼゼロです。

l  労働生産性が大幅に向上すれば、賃金も上がるでしょうが、生産性が上がらない社員から「給料を上げろ」と言われて、素直に昇給させる社長はいません。生産性が上がらなければ、売上高や生産を増やすためには増員が必要なので人手不足につながります。怠けている「社内失業者」が3割いるという見方もありますが、まずは、労働生産性を上げないとお話にならないのです。
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【Timely Report】Vol.292(2018.11.19)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事
過疎の村は生産性が上がる?」も参考になります。

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l  日本語学校の経営にとんでもない逆風が吹き始めました。昨年末に公表された「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」によれば、在校生の日本語能力試験の結果を公表するように義務付けられるほか、その合格率によっては「留学ビザ」の対象校から外されるだけでなく、在校生が検挙された場合には、当局のブラックリストに掲載されて、各種のビザ審査に活用されることになります。実際、昨年から一部の国からの留学生に関しては、既にビザの許可率が著しく下落しています。さらに、お客さまである海外の出稼ぎ希望者が、週28時間という上限があり、年間70万円前後の学費がかかる「留学」よりも、就労時間の上限がなく、学費も要らない「特定技能」という別ルートを選ぶのではないかという懸念が浮上しています。

l  このため、日本語学校の設立や専門学校の増設を延期したり、断念したりするケースが出てきました。日本語学校が445校(2010年)から711校(20188月)へと急増したことに象徴されるように、絶好調の右肩上がりを続けてきた留学生ビジネスですが、今年は大きな転機を迎えるかもしれません。

【Timely Report】Vol.406(2019.5.16)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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ゴーン逮捕は外国人排斥か?」も参考になります。

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l  マスコミでは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、業績が悪化した勤め先から突然解雇される「派遣切り」の記事が散見されます。外国人労働者は非正規雇用の割合が高く、突如仕事を失い途方に暮れている人も少なくないので、彼らの苦境にスポットライトが当たるのです。ただ、派遣切りに遭った外国人労働者が生活苦に陥っているのと同時に、外国人主体の派遣会社も経営難に直面しています。ホテル、旅館、免税店、工場、ITなどの各分野で派遣が急減しているため、ビジネスが成り立たなっているのです。

l  そうなれば、「生き残るためなら何でもあり」になるのは世の常。例えば、派遣会社の外国人従業員が特定技能を取得して、京都市内の特別養護老人ホームで働き始めるというニュースがありましたが、特定技能の介護では派遣が認められておらず、違法の可能性が匂ってきます。また、ネパールにある日本語学校と業務提携を結んだ派遣会社では、IT・土木・機械に特化して外国人を派遣するといいますが、そのビジネスにフィットする在留資格があるとも思われません。外国人派遣は法令無視の乱世に突入するのでしょうか。

Vol.707(2020.8.7号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

  BLOG記事「入管行政:「特定活動」で留学生を雇用する!」も参考になります。
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l  バブル崩壊のときもそうでしたが、日本の政策当局者たちは、現実に生じている事象に対応する政策(reactive policy)は、それなりにこなすのですが、危機が表面化していない事象に対して前以て準備する政策(proactive policy)は極めて不得意です。そして、現実に生じている事象に対応する政策(reactive policy)を、得てして、現状を糊塗してごまかす政策(disguising policy)に転化してしまうことがよくあります。

l  長期的に必ず表面化する問題があるとします。表面化してしまった問題に対して、その場を取り繕うパッチワーク的な政策は無難にこなすのですが、問題の本質に切り込んで根本的に解決する大胆な政策は実行できません。その一方、現状を糊塗してごまかす手法は超一流です。バブル崩壊に伴う不良債権問題はその典型でしたし、少子高齢化に関して言えば、年金・健康保険・限界集落などの問題を挙げることができます。ついでに言えば、「いずれ昔の家に戻れる」という嘘をつき続ける東日本大震災に関する復興政策も、膨張を続ける財政赤字問題もその類だと思ってよいでしょう。

l  特に、「経営」に係る政策において、政策当局者たちが成功した試しはありません。それは、自らのリスクで「経営」を担った経験がないから、「経営者目線」を理解することができないからです。古くは、ホンダの自動車進出を最後まで邪魔したのは通商産業省でしたし、川崎製鉄の千葉製鉄所の建設に大反対したのは日本銀行でした。

l  最近になってこそ「ジャパンクール」などと持ち上げていますが、アニメや漫画などのサブカルなどは、まったく当局の指導を受けなかったので、ここまでの魅力を世界に発信できるようになったのです。「ジャパンクールの代表なのだから、労働基準法を遵守するように」という当局の指導が入れば、アニメ業界や漫画業界は、あっという間に廃れてしまうでしょう。

l  ひょっとすると、最近の「観光業育成」を成功例として挙げる人がいるかもしれませんが、これは、単なる「規制緩和」です。厳しすぎた「観光ビザ」の要件を緩和した結果として、来日外国人が増え、日本における消費が増えたというだけであって、観光業の「経営」に関して、当局が何らかの有効な政策を講じたという事実はありません。日本の政策当局者が実施した政策の上で、これまで効果があったものは、市場を拡大する「規制緩和」か、投資負担を軽くする「減税・補助金」ぐらいであって、「経営者目線」で立案された有効な経済政策を成功させたことなど一度もないのです。

l  政策当局者らがいかに「経営」を知らないかは、2017年末に発覚したスーパーコンピューター開発ベンチャー PEZY Computing による「助成金詐取事件」を見れば一目瞭然です。事業費用を約6億円水増しして、国から助成金4億円余りを騙し取ったというのですが、その手法は、首謀者が役員を務める電子部品会社への外注費を水増しして計上するなどの古典的な手法。経理に精通する社員はおらず、首謀者が巨額な資金の使途を決める杜撰な体制だったといいますが、そんな会社に、国は総額100億円近い資金(補助金35億円・融資60億円)の投入を決めていたと言います。「経営」を知らず、「経営者目線」を理解しない人たちが、経済政策を決定し、実行している現状には恐ろしさを覚えます。

l  政策当局者らが「経営」を分かって、あるいは「経営者目線」を理解して、経済政策を立案するなどという幻想を抱いてはいけません。彼らの脳裏にあるのは、「経営者目線」ではなく、「自分たちの権益」であって、「日本国の権益」ですらないのです。「経営」に関する政策事例でいえば、2001年に制定された「大学発ベンチャー1000社計画」が好例だと思います。2003年度には早々に1000社を超えたものの、ベンチャーの大半が軌道に乗らずに失敗が相次いだため、新規設立が激減し、尻すぼみになってしまいました。

l  しかし、政策当局者にとっては、「政策の実行」=「既得権益の発生」=「天下り先の確保」という側面がありますから、どんなに失敗したとしても、「政策」を必ず延命させようとします。経済産業省や文部科学省からすれば、「大学発ベンチャー1000社計画」に着手することを見込んで、1998年にTLOTechnology Licensing Organization=技術移転機関)を法定し、大学等における発明や特許等の民間事業者への技術移転の促進を図ることを主要業務とした組織を捻り出して、天下り先を大量に確保しただけに失敗することは許されません。

l  経済産業省らは、2012年に学生ベンチャーに近いユーグレナ(2005年創業)が上場したことに復活の好機を見出します。しかし、同社は、純粋な大学発ベンチャーではなかったほか、粉飾事件に問われたライドドアの支援を受けていて、破綻の危機に陥った経緯があるなどピカピカではありませんでした。そこで、2013年に純粋な大学発ベンチャーであるぺプチドリーム(2006年創業)がユーグレナに続いたことを捉えて、2014年度から国立大学のベンチャーキャピタルに出資を行い、それを経由して大学発ベンチャーに投資資金を回す仕組みを創り上げます。その上で、「大学発ベンチャーの時価総額が1兆円を超えた」などと煽り、2016年からは「ベンチャー・チャレンジ2020」という標語を掲げて、再び「大学発ベンチャー」を盛り上げるキャンペーンを始めています。

l  例えば、「ベンチャー・チャレンジ2020」を推進する経済産業省は、アンケートを実施して、20174月に「黒字化した大学発ベンチャーの割合は55.7%(=6割も黒字化しているのだから、大学発ベンチャーをもっと推進しよう)」と成果を強調しています。しかし、これなどは、典型的な「現状を糊塗してごまかす政策(disguising policy)」です。

l  アンケートに答えた大学の割合は約半分(54%)にとどまり、何でも言うことを聞くはずのTLOに至っては18%しか回答していません。成功していない大学やTLOは回答しないでしょうから、回答しなかった分を「赤字」とみなせば、黒字化した比率は10%(=55.7×18%)にすぎない可能性すらあるのです。文部科学省によれば、2014年までに設立された大学発ベンチャーは2311社に達するのですが、帝国データバンクが2015 年の黒字を確認できたのは298社にすぎません。これらの数値に基づけば、黒字化比率は12.9%と見ることもできます(法的整理になった2社を含まず)。

l  要するに、経済産業省による大本営発表は、「潰れた先や不振でない先に限って言えば、55.7%が黒字である」と言っているだけなので、全然大したことはありません。実際、帝国データバンクの調べによれば、生き残った先に限ってみても、年商1億円未満が63.8%(年商10億円未満95.7%)で、従業員20人以下が86.3%(従業員100人以下98.7%)にすぎないのですから、「大成功」でないことは、誰の目にも明らかです。でも、経済産業省は、「大学発ベンチャーは約6割が黒字化した」と主張します。これが日本の経済政策の実態なのです。

l  当たり前の話ではありますが、政策当局者らに「経営能力」はありません。したがって、「経営者目線」があるはずがありません。政策当局者の中では、どちらかと言えば、「経営者目線」に近いと思われる経済産業省ですらこの程度なのですから、入管に対して、「経営者目線」を期待してはなりません。入国管理法や入管行政についても、多くを期待すべきではないのです。それが残念な現実なのです。
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【Timely Report】Vol.75(2018.1.9)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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将来への不安を解消せよ!」も参考になります。

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