外国人経済研究所

外国人と経済の関係を解き明かしていきます。

タグ:消費

l  3月の景気動向指数が低下し、6年2カ月ぶりに景気の基調判断が「悪化」に転じました。「アベノミクスの効果は終焉した」という感じがしますが、その後公表されたGDPは、消費と設備投資が不振であったにもかかわらず、大幅な輸入減に助けられ、2期連続のプラスになりました。エコノミストの間では悲観派が急増していますが、政府は景気回復の旗を降ろしていません。

l  しかし、「チョイ高商品」が全く売れない現実を直視すれば、「景気は悪い」と判断せざるを得ません。今年1月に、サンドイッチチェーン店サブウェイのフランチャイズ店を運営するエージー・コーポレーションが倒産。5月17日にはバーガーキングの大量閉店も明らかになりました。吉野家は2019年2月期連結決算で60億円の赤字に陥り、モスバーガーを運営するモスフードサービスも、2019年3月期連結決算が赤字の見通し。地方百貨店の閉店数は、年内に9年ぶりの2ケタ台に乗ると予測されています。

l  消費者が「わずかな割高感に対しても非常に厳しい」という現実が、庶民の懐の寒さを物語っています。大本営発表は無視して、防御を固めるべきです。

【Timely Report】Vol.453(2019.7.23号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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l  「物価が上がれば、景気が良くなる」(=物価上昇=賃金上昇=消費増大=景気向上)という宗教に対して、経営者たちがどのように対処したかを確認しておきましょう。直近1年間(201611月~201710月)の正社員賃金の上昇率(前年比)は+0.1%~+0.5%に過ぎず、年間平均でも+0.3%にすぎません。労働需給の調整弁となっているアルバイトの時給を見ると、職種によっては、前年比+3.0%を超えるケースもありますが、給与総額で見ると▲0.9%~+2.0%の範囲内にとどまっており、平均的には+0.6%程度。

l  ちなみに、物価上昇分を差し引いた実質賃金の前年比(=賃金上昇率-物価上昇率)は、正社員は▲0.4%~0.0%と水面下で推移しています。消費増の背景となるべき実質賃金が増えていないのに「消費が増える」と主張する方がどうかしています。そういう状況下で物価が上がれば、さらに実質賃金は下がることになってしまいます。そうなれば、ますます消費は冷え込みます。この一例を見ても、「物価が上がれば、景気が良くなる」という宗教(=邪教)が誤っていることは明白なのです。

l  統計を詳細に分析すれば、景気が良いはずの都市圏で倒産が増えつつあり、景気があまりよくない地方圏では倒産が目立たなくなっています。2017年度上半期における企業の倒産件数は、前年比で9年ぶりに前年を上回りました。全国での倒産の増加率は+0.1%とほんの少しだけ上回った感じなのですが、その内訳を見ると、九州・沖縄は▲12%、静岡県は▲13%と地方における倒産の減少が目立ちます。ところがその一方で、東京都の倒産件数は前年比で+11%、近畿は+13%、中部3県は+14%と、主に都市圏で倒産件数が増加しているのです。つまり、都市圏で倒産件数が2ケタ増になっている一方で、地方圏では倒産件数が減っているという現象が生じているわけです。

l  要するに、景気が良いはずの都市圏では人が採用できない零細企業が倒産し、景気が悪い地方では人手不足倒産が起きにくいという「常識とは逆転した結果」になっています。つまり、直面している好況をチャンスと捉えて、「人手不足賃金上昇価格上昇売上増大」という針路を選択した都市圏の企業が人手不足で倒産に至っている一方、成長をあきらめて、「人手不足拡大抑制賃金抑制縮小均衡」という指針に忠実な地方企業では、倒産に至りにくいという現象が観察されているのです。本当に経済状況を改善したいと願う政策当局者なのであれば、この事実を軽視すべきではありません。

l  ところが、そんな中で、政策当局者は、「雇用供給の削減」という愚かな政策を大々的に推進しようとしています。「人手不足」の上に、さらに「人手不足」を加速させようというのです。「電通ショック」に象徴される残業廃止・労働時間削減の波は止まるところを知らず、深刻な「人手不足」を、さらに深刻化させていますが、アルバイトや派遣という弾力的な労働力を「正規労働化」という名目の下、非弾力的にしようとしています。さらに、人手不足を緩和してきた留学生アルバイトすらも、「28時間超の撲滅」という正義の旗の下、大々的に退治しようとしています。これらの結果、2018年は、「安定的で健全な人手の確保」に失敗した数多くの企業が極めて苦しい難局に直面する年になると予測されます。

l  特に、労働需給の調整弁になってきた残業時間の柔軟性を失わせてしまったことが悪影響を及ぼします。さらに、日本政府は、アルバイトや派遣という「非正規労働」についても、「正規労働=正社員」化を推し進めていますから、アルバイトや派遣による調整弁の機能も鈍くなります。それに加えて、留学生アルバイトという調整弁を封じてしまったら、労働市場において、マーケット・メカニズムを機能させることは極めて難しくなっていくでしょう。

l  この誤った経済政策の実施は、地価上昇に歯止めをかけるために誤った政策を総動員した「バブル崩壊」を髣髴とさせます。「地価上昇=悪」という思い込みが「地価下落=善」という宗教にまで高まった結果、日本の政策当局者は、通常の金融引き締めだけに飽き足らず、1990年に「総量規制・三業種規制」(不動産向け融資を抑制し、不動産業・建設業・ノンバンクへの融資を厳格化する)という極めて人工的な「地価下落」の劇薬を投与しました。マーケット・メカニズムの機能を無視して実施された政策の結果が、「官製不況」とも呼ばれる、20年を超えるデフレをもたらしましたのですが、日本の政策当局者は、この惨事から何も学んでいないように見えます。

l  「地価下落=善」という邪教に突き動かされた1990年代の誤った経済政策は、マーケット・メカニズムの機能を無視して、人工的な「カネ不足」を演出し、手ひどい貸し渋りや貸しはがしを惹起しました。それが、20年を超える経済不振を日本にもたらしました。そして、いま、「労働削減=善」という邪教に突き動かされた経済政策は、マーケット・メカニズムの機能を無視して、人工的な「ヒト不足」を演出し、その不足度合いをさらに加速しようとしています。その結果がどうなるかについては、今後の趨勢を見守るしかありませんが、2018年以降、悲惨な影響をもたらすことだけは確かです。
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【Timely Report】Vol.75(2018.1.9)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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l  富裕国だったベネズエラが大変なことになっています。「21世紀の社会主義」を掲げ、賃上げや所得補填などで富裕層の富を貧困層に分配したところ経済が破綻。生活に困窮した人々が「移民」となって隣国に押し寄せています。

l  ベネズエラの惨状を見た韓国の主要紙が「韓国もベネズエラの二の舞になる」として文在寅政権の経済政策を大批判。経営の現場を無視した賃上げ政策の撤回を求めています。「最低時給1000円」を掲げる「所得主導成長論」が想定していた「賃金増➡雇用増消費増➡業績好転」というシナリオは実現せず、「賃金増➡雇用減➡消費減➡業績悪化」に陥ったと指摘しています。

l  じつは日本も韓国と同じ。「所得主導成長論」を掲げて、「賃上げすれば景気は良くなる」という前提で経済政策が運営されています。経営の現場を無視し、「物価が上がれば景気は良くなる」「時短をすれば生産性は上がる」「人手不足になれば経済は良くなる」という勘違いの中で、誤った賃上げ政策が処方されれば、経営の現場が疲弊するのは必至。20年後に日本が韓国やベネズエラのようになっていないことを切に望みます。
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【Timely Report】Vol.240(2018.9.5)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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