外国人経済研究所

外国人と経済の関係を解き明かしていきます。

タグ:政策

l  南アフリカで確認された新型コロナの新たな変異ウイルスの感染が広がりを見せていることを受け、岸田首相は11月30日から、世界のすべての国や地域を対象にビジネス目的などの外国人の新規入国を原則停止することを明らかにしました。「これらの措置は、オミクロン株についての情報がある程度明らかになるまでの、念のための臨時異例の措置だ」と説明し、とりあえず1ヶ月間の措置になりそうですが、解除基準は明らかではありません。

l  11月8日から入国規制が緩和され、留学生や技能実習生の入国が再開される運びとなったほか、特定技能2号の全面解禁を示唆する記事が出回ったことで久方ぶりの歓喜に沸いた関係業界は、今回の一撃で意気消沈。

l  岸田首相は、この措置を断行するにあたって、「未知のリスクには慎重の上にも慎重に対応すべきと考えて政権運営を行っている。まだ状況が分からないのに慎重すぎるという批判は、私がすべてを負う覚悟でやっていく」と大見得を切りましたが、肝心要である外国人政策の基本方針は曖昧模糊としたまま。一連の政策に確固たる哲学が感じられないので不安を拭い切れません。

Timely ReportVol.8522021.12.02号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report



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l  6月28日、日本にベトナム人不法就労者を派遣していたとして、会社経営者がベトナムで逮捕されました。「観光ビザ」を取得したベトナム人13人を日本に送り込み、不法就労をさせていた疑いが持たれています。「偽造在留カード」が1~3万円で手に入るようになったので、「出稼ぎ目的」で2年前後で帰国するつもりなら、「観光ビザ」で十分ということなのでしょう。

l  「技能実習」で来日する場合、ブローカーに多額の費用を請求されるため、その借金を返すまでは帰国することができず、しかも、転職不可のため失踪せざるを得ず、不法残留して、不法就労者になるというパターンに陥っていました。ところが、「偽造在留カード」が安価に出回るようになったため、初めから不法就労を目的に来日する外国人が増加しているのです。

l  外国人の間で、「偽造がバレて逮捕されたら、帰国すればいい」という割り切りが広がれば、歪んだ「技能実習」を選ばずに、「根っからの不法就労者」が急増します。正式な在留資格での就労を困難化させていることが、より悪質な犯罪へと誘います。歪んだ政策は、最悪の結果を招くものなのです。

【Timely Report】Vol.486(2019.9.9号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事
留学ビザは締め上げられる?」も参考になります。

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l  外国人労働者の受入増に反対する論者が反撃の機会を窺っています。「社会が分断化される」「日本社会が壊れる」「日本人の美徳が損なわれる」「日本文明が死ぬ」など、言葉も激しさを増してきました。

l  もちろん、外国人を受け入れることによって、無視できない摩擦は生じます。軽視できない問題も数多く発生するでしょう。悲惨な事件が起こるかもしれません。しかし、だからと言って、「外国人は受け入れるべきでない」と決め付けるのは短絡的です。それは、「人員削減につながるからIT化には反対だ」「交通事故が起こるから、自動車は全面禁止にすべき」「殺人に使われたから、包丁の購入は許可制にする」などという主張に近いものがあります。

l  あらゆる政策には副作用が伴います。これは選択問題です。「人口減少で縮小する経済の中での耐え難い苦痛」と「外国人を受け入れることによる解決し難い苦悩」のどちらを選ぶのか。片方だけを指摘して痛罵したところで何も解決できません。苦痛と苦悩を秤にかけて選ぶ必要があります。現実問題として、「耐え難い苦痛」に耐えられる日本人はほとんどいないと思います。

【Timely Report】Vol.381(2019.4.3)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事「入管法は移民を受容しない!」も参考になります。

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l  バブル崩壊のときもそうでしたが、日本の政策当局者たちは、現実に生じている事象に対応する政策(reactive policy)は、それなりにこなすのですが、危機が表面化していない事象に対して前以て準備する政策(proactive policy)は極めて不得意です。そして、現実に生じている事象に対応する政策(reactive policy)を、得てして、現状を糊塗してごまかす政策(disguising policy)に転化してしまうことがよくあります。

l  長期的に必ず表面化する問題があるとします。表面化してしまった問題に対して、その場を取り繕うパッチワーク的な政策は無難にこなすのですが、問題の本質に切り込んで根本的に解決する大胆な政策は実行できません。その一方、現状を糊塗してごまかす手法は超一流です。バブル崩壊に伴う不良債権問題はその典型でしたし、少子高齢化に関して言えば、年金・健康保険・限界集落などの問題を挙げることができます。ついでに言えば、「いずれ昔の家に戻れる」という嘘をつき続ける東日本大震災に関する復興政策も、膨張を続ける財政赤字問題もその類だと思ってよいでしょう。

l  特に、「経営」に係る政策において、政策当局者たちが成功した試しはありません。それは、自らのリスクで「経営」を担った経験がないから、「経営者目線」を理解することができないからです。古くは、ホンダの自動車進出を最後まで邪魔したのは通商産業省でしたし、川崎製鉄の千葉製鉄所の建設に大反対したのは日本銀行でした。

l  最近になってこそ「ジャパンクール」などと持ち上げていますが、アニメや漫画などのサブカルなどは、まったく当局の指導を受けなかったので、ここまでの魅力を世界に発信できるようになったのです。「ジャパンクールの代表なのだから、労働基準法を遵守するように」という当局の指導が入れば、アニメ業界や漫画業界は、あっという間に廃れてしまうでしょう。

l  ひょっとすると、最近の「観光業育成」を成功例として挙げる人がいるかもしれませんが、これは、単なる「規制緩和」です。厳しすぎた「観光ビザ」の要件を緩和した結果として、来日外国人が増え、日本における消費が増えたというだけであって、観光業の「経営」に関して、当局が何らかの有効な政策を講じたという事実はありません。日本の政策当局者が実施した政策の上で、これまで効果があったものは、市場を拡大する「規制緩和」か、投資負担を軽くする「減税・補助金」ぐらいであって、「経営者目線」で立案された有効な経済政策を成功させたことなど一度もないのです。

l  政策当局者らがいかに「経営」を知らないかは、2017年末に発覚したスーパーコンピューター開発ベンチャー PEZY Computing による「助成金詐取事件」を見れば一目瞭然です。事業費用を約6億円水増しして、国から助成金4億円余りを騙し取ったというのですが、その手法は、首謀者が役員を務める電子部品会社への外注費を水増しして計上するなどの古典的な手法。経理に精通する社員はおらず、首謀者が巨額な資金の使途を決める杜撰な体制だったといいますが、そんな会社に、国は総額100億円近い資金(補助金35億円・融資60億円)の投入を決めていたと言います。「経営」を知らず、「経営者目線」を理解しない人たちが、経済政策を決定し、実行している現状には恐ろしさを覚えます。

l  政策当局者らが「経営」を分かって、あるいは「経営者目線」を理解して、経済政策を立案するなどという幻想を抱いてはいけません。彼らの脳裏にあるのは、「経営者目線」ではなく、「自分たちの権益」であって、「日本国の権益」ですらないのです。「経営」に関する政策事例でいえば、2001年に制定された「大学発ベンチャー1000社計画」が好例だと思います。2003年度には早々に1000社を超えたものの、ベンチャーの大半が軌道に乗らずに失敗が相次いだため、新規設立が激減し、尻すぼみになってしまいました。

l  しかし、政策当局者にとっては、「政策の実行」=「既得権益の発生」=「天下り先の確保」という側面がありますから、どんなに失敗したとしても、「政策」を必ず延命させようとします。経済産業省や文部科学省からすれば、「大学発ベンチャー1000社計画」に着手することを見込んで、1998年にTLOTechnology Licensing Organization=技術移転機関)を法定し、大学等における発明や特許等の民間事業者への技術移転の促進を図ることを主要業務とした組織を捻り出して、天下り先を大量に確保しただけに失敗することは許されません。

l  経済産業省らは、2012年に学生ベンチャーに近いユーグレナ(2005年創業)が上場したことに復活の好機を見出します。しかし、同社は、純粋な大学発ベンチャーではなかったほか、粉飾事件に問われたライドドアの支援を受けていて、破綻の危機に陥った経緯があるなどピカピカではありませんでした。そこで、2013年に純粋な大学発ベンチャーであるぺプチドリーム(2006年創業)がユーグレナに続いたことを捉えて、2014年度から国立大学のベンチャーキャピタルに出資を行い、それを経由して大学発ベンチャーに投資資金を回す仕組みを創り上げます。その上で、「大学発ベンチャーの時価総額が1兆円を超えた」などと煽り、2016年からは「ベンチャー・チャレンジ2020」という標語を掲げて、再び「大学発ベンチャー」を盛り上げるキャンペーンを始めています。

l  例えば、「ベンチャー・チャレンジ2020」を推進する経済産業省は、アンケートを実施して、20174月に「黒字化した大学発ベンチャーの割合は55.7%(=6割も黒字化しているのだから、大学発ベンチャーをもっと推進しよう)」と成果を強調しています。しかし、これなどは、典型的な「現状を糊塗してごまかす政策(disguising policy)」です。

l  アンケートに答えた大学の割合は約半分(54%)にとどまり、何でも言うことを聞くはずのTLOに至っては18%しか回答していません。成功していない大学やTLOは回答しないでしょうから、回答しなかった分を「赤字」とみなせば、黒字化した比率は10%(=55.7×18%)にすぎない可能性すらあるのです。文部科学省によれば、2014年までに設立された大学発ベンチャーは2311社に達するのですが、帝国データバンクが2015 年の黒字を確認できたのは298社にすぎません。これらの数値に基づけば、黒字化比率は12.9%と見ることもできます(法的整理になった2社を含まず)。

l  要するに、経済産業省による大本営発表は、「潰れた先や不振でない先に限って言えば、55.7%が黒字である」と言っているだけなので、全然大したことはありません。実際、帝国データバンクの調べによれば、生き残った先に限ってみても、年商1億円未満が63.8%(年商10億円未満95.7%)で、従業員20人以下が86.3%(従業員100人以下98.7%)にすぎないのですから、「大成功」でないことは、誰の目にも明らかです。でも、経済産業省は、「大学発ベンチャーは約6割が黒字化した」と主張します。これが日本の経済政策の実態なのです。

l  当たり前の話ではありますが、政策当局者らに「経営能力」はありません。したがって、「経営者目線」があるはずがありません。政策当局者の中では、どちらかと言えば、「経営者目線」に近いと思われる経済産業省ですらこの程度なのですから、入管に対して、「経営者目線」を期待してはなりません。入国管理法や入管行政についても、多くを期待すべきではないのです。それが残念な現実なのです。
金融危機, 証券取引所, トレンド, シンボル, 矢印, 方向, ダウン, 低迷
【Timely Report】Vol.75(2018.1.9)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事
将来への不安を解消せよ!」も参考になります。

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l  「物価が上がれば、景気が良くなる」(=物価上昇=賃金上昇=消費増大=景気向上)という宗教に対して、経営者たちがどのように対処したかを確認しておきましょう。直近1年間(201611月~201710月)の正社員賃金の上昇率(前年比)は+0.1%~+0.5%に過ぎず、年間平均でも+0.3%にすぎません。労働需給の調整弁となっているアルバイトの時給を見ると、職種によっては、前年比+3.0%を超えるケースもありますが、給与総額で見ると▲0.9%~+2.0%の範囲内にとどまっており、平均的には+0.6%程度。

l  ちなみに、物価上昇分を差し引いた実質賃金の前年比(=賃金上昇率-物価上昇率)は、正社員は▲0.4%~0.0%と水面下で推移しています。消費増の背景となるべき実質賃金が増えていないのに「消費が増える」と主張する方がどうかしています。そういう状況下で物価が上がれば、さらに実質賃金は下がることになってしまいます。そうなれば、ますます消費は冷え込みます。この一例を見ても、「物価が上がれば、景気が良くなる」という宗教(=邪教)が誤っていることは明白なのです。

l  統計を詳細に分析すれば、景気が良いはずの都市圏で倒産が増えつつあり、景気があまりよくない地方圏では倒産が目立たなくなっています。2017年度上半期における企業の倒産件数は、前年比で9年ぶりに前年を上回りました。全国での倒産の増加率は+0.1%とほんの少しだけ上回った感じなのですが、その内訳を見ると、九州・沖縄は▲12%、静岡県は▲13%と地方における倒産の減少が目立ちます。ところがその一方で、東京都の倒産件数は前年比で+11%、近畿は+13%、中部3県は+14%と、主に都市圏で倒産件数が増加しているのです。つまり、都市圏で倒産件数が2ケタ増になっている一方で、地方圏では倒産件数が減っているという現象が生じているわけです。

l  要するに、景気が良いはずの都市圏では人が採用できない零細企業が倒産し、景気が悪い地方では人手不足倒産が起きにくいという「常識とは逆転した結果」になっています。つまり、直面している好況をチャンスと捉えて、「人手不足賃金上昇価格上昇売上増大」という針路を選択した都市圏の企業が人手不足で倒産に至っている一方、成長をあきらめて、「人手不足拡大抑制賃金抑制縮小均衡」という指針に忠実な地方企業では、倒産に至りにくいという現象が観察されているのです。本当に経済状況を改善したいと願う政策当局者なのであれば、この事実を軽視すべきではありません。

l  ところが、そんな中で、政策当局者は、「雇用供給の削減」という愚かな政策を大々的に推進しようとしています。「人手不足」の上に、さらに「人手不足」を加速させようというのです。「電通ショック」に象徴される残業廃止・労働時間削減の波は止まるところを知らず、深刻な「人手不足」を、さらに深刻化させていますが、アルバイトや派遣という弾力的な労働力を「正規労働化」という名目の下、非弾力的にしようとしています。さらに、人手不足を緩和してきた留学生アルバイトすらも、「28時間超の撲滅」という正義の旗の下、大々的に退治しようとしています。これらの結果、2018年は、「安定的で健全な人手の確保」に失敗した数多くの企業が極めて苦しい難局に直面する年になると予測されます。

l  特に、労働需給の調整弁になってきた残業時間の柔軟性を失わせてしまったことが悪影響を及ぼします。さらに、日本政府は、アルバイトや派遣という「非正規労働」についても、「正規労働=正社員」化を推し進めていますから、アルバイトや派遣による調整弁の機能も鈍くなります。それに加えて、留学生アルバイトという調整弁を封じてしまったら、労働市場において、マーケット・メカニズムを機能させることは極めて難しくなっていくでしょう。

l  この誤った経済政策の実施は、地価上昇に歯止めをかけるために誤った政策を総動員した「バブル崩壊」を髣髴とさせます。「地価上昇=悪」という思い込みが「地価下落=善」という宗教にまで高まった結果、日本の政策当局者は、通常の金融引き締めだけに飽き足らず、1990年に「総量規制・三業種規制」(不動産向け融資を抑制し、不動産業・建設業・ノンバンクへの融資を厳格化する)という極めて人工的な「地価下落」の劇薬を投与しました。マーケット・メカニズムの機能を無視して実施された政策の結果が、「官製不況」とも呼ばれる、20年を超えるデフレをもたらしましたのですが、日本の政策当局者は、この惨事から何も学んでいないように見えます。

l  「地価下落=善」という邪教に突き動かされた1990年代の誤った経済政策は、マーケット・メカニズムの機能を無視して、人工的な「カネ不足」を演出し、手ひどい貸し渋りや貸しはがしを惹起しました。それが、20年を超える経済不振を日本にもたらしました。そして、いま、「労働削減=善」という邪教に突き動かされた経済政策は、マーケット・メカニズムの機能を無視して、人工的な「ヒト不足」を演出し、その不足度合いをさらに加速しようとしています。その結果がどうなるかについては、今後の趨勢を見守るしかありませんが、2018年以降、悲惨な影響をもたらすことだけは確かです。
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【Timely Report】Vol.75(2018.1.9)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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