外国人経済研究所

外国人と経済の関係を解き明かしていきます。

タグ:働き方改革

l  平成時代、日本の国際的地位は一貫して低下しました。GDPの規模で言えば、当初、中国は取るに足らない存在でしたが、2010年に日本に追いつき、今では2倍近い規模になりました。日本の1人あたりのGDPは米国より高く、生活も豊かでしたが、あっという間に逆転され、かなり差がつきました。

l  ところが、未だに日本人は「日本は経済大国であり、日本人は優れている」という思い込みから抜け出せていません。残業の上限規制を導入し、GW10連休にしました。「働き方改革」ならぬ「働くな改革」が進行中です。そんな余裕が日本にあるのでしょうか。ハードワーキングでない日本人が、欧米やアジアの天才たちと伍していけるのでしょうか。現状のままでは、日本と世界の差はさらに開いていくことになると思います。

l  「水面を優雅に浮かぶ白鳥も水面下では必死に足をもがいている」という喩えは、事実に反しているという説が有力ですが、ビジネスにおいて、「同じ場所に留まるためには一生懸命に走らなければならない」というのは事実。実態を踏まえない「働くな改革」の戯言に乗せられてはいけないと思います。

【Timely Report】Vol.437(2019.6.28号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事
留学ビザは締め上げられる?」も参考になります。

外国人と入管の関係に興味のある方は ➡ 全国外国人雇用協会 へ
移民に関する国際情勢を知りたい方は ➡ 移民総研 へ

l  先週決議された「骨太方針」には、2019年10月の消費税率10%引き上げによる景気の落ち込みを回避するための対策が明記されました。安倍政権は、「それほど景気は良くない」という現実を認識しているのだと思います。

l  2018年1~3月期の国内総生産(GDP)は、実質で前期比▲0.2%。2015年10~12月期以来、9四半期ぶりのマイナス成長でした。野菜やガソリンなど身の回り品の値上がりで個人消費が低調だったほか、住宅投資が3四半期連続で落ち込み、設備投資も▲0.1%と6四半期ぶりにマイナス。生活実感に近い名目GDPを見ると▲0.4%、年率で▲1.5%の惨憺たる状況です。

l  帝国データバンクの景気動向調査(4月)では、4年10カ月ぶりに全業界で景況感が悪化しました。アベノミクスに対する評価も、「先行きが暗い」「内需がまったく回復していない」「働き方改革や賃上げを中小企業にも求めるのは無理がある」など、人手不足に苦しむ中小企業の間で辛口の評価が多く、62.4点と昨年より0.7点下がっています。だからこそ安倍政権は、「特定技能」という新機軸を打ち出さざるを得ないのです。
起業家, アイデア, 能力, ビジョン, ターゲット, マーケティング, 計画
【Timely Report】Vol.185(2018.6.19)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事
アベノミクスには期待できない!」も参考になります。

外国人と入管の関係に興味のある方は ➡ 全国外国人雇用協会 へ
移民に関する国際情勢を知りたい方は ➡ 移民総研 へ

l  愚かな経済政策は、経営者に過度な負担をかけ、死に至らしめます。直近で言えば、「働き方改革」とか「最低賃金の毎年引き上げ」ということになるのだと思います。経済と経営のメカニズムを熟知しない素人たちが、万人受けを狙って、「残業時間を減らして、時給を上げれば、生産性が向上して、経済は良くなる」という宗教を流行らせて、法律まで作ってしまいました。

l  その結果はと言えば、大企業の「働き方改革」を実現させるために下請企業で残業が増え、1人で対応していた仕事に2人貼り付けて生産性が下がり、部下を定時で帰らせて独りで残務を仕上げる管理職が苦しみ、仕事に燃えて残業したい若手を無理やり帰らせてしまうという喜劇を演出。

l  最低賃金を引き上げれば経済は良くなるという宗教を唱えるエコノミストは、韓国がそれで失敗したことを知ると、「韓国は賃上げ速度が速すぎた」と弁解。生産性の向上を上回る賃上げは経済にマイナスであることがはっきりしたのに、「日本は毎年5%賃上げすべき」と断言。日本の生産性向上が年5%を超えていたことなど、高度成長期の一時期しかないのですが・・・。

【Timely Report】Vol.377(2019.3.28)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事「アベノミクスには期待できない!」も参考になります。

外国人と入管の関係に興味のある方は ➡ 
全国外国人雇用協会 へ
移民に関する国際情勢を知りたい方は ➡ 移民総研 へ

l  経済政策は、ここまで述べてきた経営の実態を含んだ「経済メカニズム」を十分に理解していないとうまく機能しません。ここでいう「経済メカニズム」とは、①企業運営の実際と経営者の行動や心理、②労働者の行動や心理、③消費者の行動や心理、④それらすべてをひっくるめた物価や賃金を決定する市場メカニズムの機能、⑤企業運営の実際と市場メカニズムの機能とのフィードバック、のことを指します。残念ながら、学者たちは④の表面しか語れず、せいぜい②と③を付け足して終わりというケースがほとんどです。

l  しかし、本当に日本経済を改善したいのであれば、①~⑤のすべてを含めて現状を的確に分析し、適切な経済政策を講じなければ、政策は有効に機能しません。そして、既に導入した諸政策に関しても見直す必要があるのであれば、正しく訂正する必要があります。その意味で、現在の経済政策については、手直しすべきところが多々ありますが、中でも、今後の日本経済に多大な影響を与え得るという点で懸念されるのが「働き方改革」です。その中でも、20194月(中小企業は20204月施行)に施行される「時間外労働の上限規制」(月45時間かつ年360時間が上限)は、刑事罰(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金)まで導入しているので、ひとつ間違えば、「韓国の悲劇」(後述)を後追いすることになります。

l  まずは、現実を直視しましょう。従来、暗黙裡に想定している「向上心があって、勤勉で、ハードワークを厭わない日本人」という仮定を捨てて、「上昇志向はなく、プライベートに熱心で、ハードワークを厭う日本人」しかいないと考えてみてください。その環境下で、「労働時間を減らせば、労働生産性は向上する」という短絡的な思考で展開されている「働き方改革」が、どのように機能するかを想像してください。かつてのように「向上心があって、勤勉で、ハードワークを厭わない」人材ばかりなのであれば、確率は低いとは思いますが、百歩譲って、「時間短縮➡創意工夫➡生産性向上」という可能性はゼロとは言いません。しかし、「労働力劣化」が進み、「上昇志向はなく、プライベートに熱心で、ハードワークを厭う」という性質に変質していたとすれば、生産性向上が起こる可能性はゼロであり、時間短縮により、生産力劣化や生産量過少が発生することが明らかです。もっと言えば、何か不満があれば、労働基準監督署や悪徳弁護士に駆け込み、「法令違反」だと喚き散らす輩を増殖させるだけでしょう。ヒドイ企業があることは否定しませんが、クレーマー的な労働者がいることもまた事実です。

l  「上昇志向はなく、プライベートに熱心で、ハードワークを厭う」という労働者が無視できない数になっている中で、時間短縮により生産性が向上する可能性はありません。企業運営を困難化させるだけです。無論、経営者が労働者の能力や生産性を向上させることに匙を投げて、省力化投資やAIなどの機械化に走る可能性は否定できません。しかし、その経営行為は、「労働者の排斥」であって、「労働者の生産性向上」ではありません。

l  この点も、十分に理解せずに空論を唱える論者が多いので指摘しておきますが、賃金と生産性の関係でいえば、労働者の賃金が上昇するのは、「労働者の生産性」が向上したときであって、省力化投資による機械化によって「会社の生産性」が向上したときに、「まず労働者に配分すべき」と考える経営者はいません。無論、「会社の生産性」が向上したため、労働者の賃金を引き上げる余裕が生まれる中で、労働需給が逼迫していることを勘案して、賃金UPに同意することはあるでしょう。しかし、機械化によって「会社の生産性」が向上したときに、経営者が真っ先に考えるのは、機械のメンテナンスや劣化防止や性能向上であって、賃金UPではありません。生産性の向上をもたらしたのは「機械」であって、「労働者」ではないからです。

l  今でも、「賃金が上がらないのは、人手不足が足りないから」という誤診をしている論者は少なくありませんが、現状は、需要増に牽引される「好景気」ではなく、単なる「人手不足」。需要が弱いから値上げしたらお客さまは離れるだけです。それを熟知しているから、経営者たちは「人手不足➡賃金上昇➡価格上昇」という針路ではなく、時短や休業という「労働投入量の減少」を選び、「人手不足拡大抑制賃金抑制縮小均衡」という針路をとっているわけであり、そういう中で、労働力の減少を補うために省力化投資を行う企業は、いずれ増えていくと思われます。しかし、機械化により「会社の生産性」が向上したからと言って、それが賃金UPにストレートに反映されるわけがありません。労働者自身の生産性が向上したわけではないからです。

l  経営者の立場から見れば、賃金の上昇は、あくまでも「労働者の生産性」の伸びの範囲内にとどめられるべきものであって、労働者自身の努力や生産性向上なしに賃金上昇などあり得ません。ところが、マスコミにおける議論は、「労働者自身の生産性」の話なのか、「機械化による生産性向上」の話なのかがわからない。じっくり聞いてみると、日本共産党のように、「これまで企業は搾取してきたのだから労働者に返せ」みたいな議論だったりします。生産性向上と賃金に関する議論は、厳密に場合分けした上で論じるべきです。

l  日本が「働き方改革」を本格的に実施する前に参考にしておくべき経済事象として、「韓国の悲劇」を紹介します。「経済メカニズム」を無視して、経済政策を実施すると、手痛いしっぺ返しを食うという良い見本です。韓国の文在寅政権は、「所得主導成長論」を掲げて、「賃上げすれば景気は良くなる」という前提で経済政策を運営しました。元々、支持基盤の労働者層への支援として、「2020年最低賃金1万ウォン」を公約に掲げ、日本を上回る最低賃金(約1000円)に引き上げることを約束して、文在寅氏が政権奪取を果たしたという経緯があります。この約束を無下にすることはできません。

l  実際、最低賃金の引き上げは急ピッチで実施されました。2010年に4110ウォンだった最低賃金は、毎年68%ずつ上昇し、2017年には6470ウォンに。これだけでも中小企業にとっては軽くない負担増でしたが、文在寅政権発足以降、2018年に16.4%上昇(7530ウォン)。さらに2019年には、これが10.9%上昇して、8350ウォン(約835円)にすることになりました。その上、今年の71日からは労働時間の上限を、残業を含め週52時間に短縮することを柱とした改正勤労基準法も施行。従業員300人以上の企業等に適用され、2021年までに中小企業にも適用します。まるで安倍政権の「働き方改革」を先取りしたのではないかと思いたくなるほど酷似しています。

l  しかし、その結果、最低賃金の引き上げと労働時間の週52時間制で零細企業と自営業者らの経営は委縮し、少なからず破綻しました。韓国の銀座と呼ばれる明洞でも店舗の閉鎖が加速し、雇用の縮小を招いています。経営者たちは、「美容室の経営者も月200万ウォン(約20万円)を稼ぐのが難しいのに、最低賃金が上がり、洗髪もまだ慣れていない補助職員に多くの時給を支払わなければいけない」「今年の最低賃金が16.4%も上がり、職員1人を解雇した。代わりに肩の手術を昨年2回も受けた父が朝から手伝っている」「昼食時間の商売だが、120皿ほど売っていたのが今は7080皿しか売れない。こういう状況で最低賃金を上げるのは商売をやめろと言うのと変わらない」「すでに自動車産業など一部製造業の正規職の賃金は日本企業よりも高い。これ以上、人件費が上昇すると、どうやって競争力を維持するのか」などと口々に叫びました。野党は、これに呼応し、「自営業者はすでに死にかけているが、薬を与える考えはなく、政府は信じて待ってほしいという言葉を繰り返している」「国民の生活を改善するためには、商売がうまくいって売り上げが増えなければいけない」「与党に警告する。現場に答えがある。出てきて耳を傾けるべきだ」と批判しました。自民党も気を付けるべきです。

l  2015年~2017年の3年間、月平均の「就業者増加数」は概ね30万人でしたが、2018年の16月の平均は142000人と半減。業種別に見ると、「卸小売業」「宿泊飲食業」「施設管理業」で就業者数が大幅に減少しており、1月の最低賃金引き上げ後、職を失う例が多く見られました。就業者増加数は、78月には2カ月連続で1万人を下回り、失業者も増加。7~9月期の月平均失業者は、前年同期より102000人増えた1065000人で、通貨危機の後遺症に苦しめられた1999年に1332000人を記録してから最も多い数になりました。7~9月期に失業者が100万人を超えたのは19年ぶりです。さらに、不況の中の物価高(スタグフレーション)が進んでおり、農産物、外食費、ガソリン代などの価格が全般的に上昇しています。

l  9月の鉱工業生産指数は前年比▲8.4%と不振。9月の設備投資指数も前年比▲19.3%と急降下。「景気はピークを越え下振れリスクが強まった」とみるエコノミストが増えています。文在寅政権は、大企業や財閥主導で経済のパイ全体を拡大させるこれまでの経済政策とは一線を画し、「賃上げ➡消費拡大➡企業業績向上➡投資拡大」という経路を目論んでいました。ところが、最低賃金が一気に上昇しため、雇用主は、人件費を抑えるため「雇用削減」に踏み切ります。大幅に引き上げられた「最低賃金」を守るために、雇用する従業員を1人、2人と減らすことで対応したわけです。「所得主導の成長」どころではありません。最低賃金で働く従業員同士で「雇用」の奪い合いが起き、全体として雇用は減少しました。これが誤った経済政策の帰結です。

l  自営業者や中小企業は、最低賃金を来年時給8350ウォンにすると決めた政府に猛反発。8月末には3万人のデモを決行し、経営の現場を無視した政策の撤回を求めました。「最低時給1000円」を掲げる「所得主導成長論」が想定していた「賃金増消費増業績好転雇用増」というシナリオは実現せず、「賃金増雇用減消費減業績悪化」に陥っています。この事態を重く見た文在寅大統領は、119日に「所得主導成長論」を主導してきた金東兗・経済副首相兼企画財政相と張夏成・大統領府政策室長の2人を更迭しました。経営の現場を無視し、「物価が上がれば景気は良くなる」「時短をすれば生産性は上がる」「人手不足になれば経済は良くなる」という勘違いの中で、誤った賃上げ政策や「働き方改革」が処方されたならば、経営の現場が疲弊するのは必至です。それは、韓国でも、日本でも変わりません。ちなみに、「ベネズエラの大惨事」(後述)を見た韓国の主要紙は、「韓国もベネズエラの二の舞になる」として文在寅政権の経済政策を大批判しています。

l  「経済メカニズム」を無視して経済政策を実施すると手痛いしっぺ返しを食った1998年の事例として、ベネズエラもご紹介しましょう。1999年に就任したチャベス大統領は「21世紀の社会主義」を掲げました。革命実現のため石油会社のPDVSAに対し国庫への拠出を増やすよう求め、経営の独立性を保ってきた同社と衝突し、200212月にはPDVSAを中心とするゼネラルストライキに発展。約2カ月に及んだストは失敗し、チャベス政権はストに参加した職員約2万人を解雇しました。全職員の半数におよび、経営経験が豊富な幹部や専門技術を持った職員が去りました。チャベス政権は「革命」に忠実な軍人や政治家ら「政治任用組」をPDVSAに送り込み、職員は10万人以上に膨れ上がりましたが、技術的・専門的な知識はありませんでした。

l  チャベス政権は、富裕層が独占していた富を国民の7割を占める貧困層に分配します。PDVSAから吸い上げた1000億ドル(10兆円)以上の巨額資金を社会政策に充てました。ベネズエラの輸出に占める石油分野の割合は9割になり、国家歳入に占める割合は5割にまで上昇し、石油依存が強まります。貧困層向けの無償住宅建設や無料診療所開設、格安の食料販売などを推進、貧困率や識字率も改善させました。その結果、貧しい人々を中心にチャベス大統領の人気は絶大なものになりました。チャベス氏の後、マドゥロ氏が大統領に就任すると、1バレル=100ドルを超えていた原油価格は、2014年から下がり始め、2016年には1バレル=40ドルに下落し、外貨が獲得できなくなりました。PDVSAは傘下企業への代金の支払いができなくなり、企業の撤退が相次ぎます。ベネズエラの原油は「超重質油」と呼ばれ、製品化のためには軽油と混ぜる必要があるのですが、外貨がないので軽油の輸入が難しくなり、原油の生産量が減少します。それが、PDVSAの経営難を惹き起こし、ベネズエラ経済を悪循環に陥らせました。

l  食料や生活必需品の不足など経済混乱が深まり、物価は急騰し、貨幣経済は崩壊しました。海外からの食糧や燃料、医療品の輸入はままならず、低い生活水準はさらに悪化。国の保健当局に予防や治療のための資源がないため、麻疹やマラリアも流行。首都カラカスのスーパーでは、牛乳やパスタが月給並みの値段で売られており、庶民には手が出ません。政府はデノミを断行し、クーポン券を発行しましたが、財政赤字を中央銀行がファイナンスしているだけなので、ハイパーインフレが悪化し、1カ月で物価が2倍になる勢い。インフレ率は年内に100万%に達するという説も。このため、ベネズエラから海外に脱出する難民は後を絶たず、周辺国にも悪影響が及んでいます。

l  1999年当時、ベネズエラは世界最大の石油埋蔵国にふさわしく豊かな国でした。しかし、原油収入を無尽蔵と考えた政府やハードワークを厭う国民は、経済メカニズムを軽視して、「宗教」に似た「社会主義」に突き進みます。石油を売って得た資金を持続可能な「経済メカニズム」を構築するために使わず、最低賃金の引き上げ、労働時間の短縮、無償福祉、公務員の増員という支出に回してしまいました。バラまかれた資金は投資・生産・雇用に結びつかなかったため、原油安で石油収入源が減ると財政が危機に陥り、貨幣を刷って国債を乱発。それで物価が上がると、市場価格を抑え、民間企業が破産すると国有化。今年5月、朝食の75%を供給してきた米国のシリアル会社ケロッグが工場閉鎖を宣言すると、マドゥロ大統領は「政府が没収して労働者の手で運営する」と宣言。支持した労働組合・学生・農民・原住民勢力は歓喜しましたが、シリアルが生産されることは二度とありませんでした。これが「経済メカニズム」を無視した報いです。

l  日本のあるエコノミストは、「現時点で日本は、ベネズエラとは違って外貨を稼げる企業がまだ数多くあり、経常収支は黒字だ。よって、当面はベネズエラの状況とは異なるのだが、財政赤字を日本銀行がファイナンスし続けることの危険性は意識する必要がある」と指摘しています。現時点において、日本経済に「ベネズエラの大惨事」が襲い掛かる可能性があるとは思いませんが、先に述べた「韓国の悲劇」でも明確に示されているように、「経済メカニズム」を無視した経済政策は、いずれ「経済メカニズム」から手痛いしっぺ返しを必ず食らいます。この大原則は、韓国やベネズエラだけにだけ適用されるのではなく、日本経済でも作用します。そして、日本政府は、未だに「物価が上がれば景気は良くなる」「時短をすれば生産性は上がる」「人手不足になれば経済は良くなる」などという「宗教」を信仰し、「経済メカニズム」を無視した経済政策を展開し続けています。

l  極めて重要なので繰り返して指摘しておきますが、「経済メカニズム」とは、①企業運営の実際と経営者の行動や心理、②労働者の行動や心理、③消費者の行動や心理、④それらすべてをひっくるめた物価や賃金を決定する市場メカニズムの機能、⑤企業運営の実際と市場メカニズムの機能とのフィードバック関係、のことを指します。これら①~⑤の観点すべてを踏まえた上で、適切な経済政策をタイムリーに講じない場合、「韓国の悲劇」は日本においても十二分に起こり得ます。最悪の場合、「ベネズエラの大惨事」だって、日本で絶対に起こり得ないとは言い切れないのです。
クラッシュ, 統計情報, チャート, グラフィック, バー, シンボル, 矢印
【Timely Report】Vol.320(2019.1.4)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事
将来への不安を解消せよ!」も参考になります。

外国人と入管の関係に興味のある方は ➡ 全国外国人雇用協会 へ
移民に関する国際情勢を知りたい方は ➡ 移民総研 へ

l  しかしながら、マスコミ報道を見ると、「年末年始、休業増える 外食や住宅働き方改革で」(時事通信:2017.12.29)や「働き方改革!飲食店や携帯ショップ 元日休業広がる」(テレビ朝日:2017.12.31)など、年末年始にかけて企業が休業を増やしていることを、「家族や友人との時間を大切にしてもらう」「休業にした方が従業員の心も体も健康になる」とか「従業員が家族と過ごす時間を増やすことで、仕事への意欲を高め、人材の定着につなげたい」という美談にすり替え、「働き方改革」を称賛しています。つまり、政策の「宗教化」が進んでいるのです。

l  マスコミが「労働削減=善」というキャンペーンを展開し続ける間、政策当局者らは、自分たちの「政策の正しさ」を実感できますから、政策の見直しは不要になります。じつは、自分たちが振り付けしたとおりに、マスコミが躍ってくれているだけですから、「政策の正しさ」が立証されているわけではないのですが、上層部からお叱りを受けることもありません。このため、「労働投入量の不足による諸問題の表面化」という呪いの恐ろしさに気付いて、経済政策を方向転換するまでには、かなりの歳月を要するでしょう。

l  実際、大晦日は、「テング酒場」等を運営するテンアライドが120店を一斉休業にしました。ロイヤルホストは全国220店舗のうち9割以上になる209店舗で元日の営業を取りやめ、天丼専門店「てんや」でも200店舗のうち7割以上を休みにしました。大戸屋も直営店146店舗のうち80店舗で休業。コンビニでも「セイコーマート」が過半数の店舗で元日休業に踏み切っています。大和ハウス工業は1/3までの住宅展示場240カ所の営業をすべて休止させ、三越伊勢丹が初売りを1/2から1/3に後ズレさせたほか、携帯電話各社でも販売店を自主休業させていると報じられました。

l  じつは、上記のような「休業」の動き(営業時間短縮)は、地方工場や中小飲食において、かなり前から広がっています。体力がない企業は、正社員を昇給させて、その分を主力商品の値段に上乗せするのではなく、供給を絞る戦略を選択し、24時間稼働を16時間に短縮したり、「夏休み」と称する休業で対応してきました。しかし、こうした中小企業における操短や休業を取材して、「働き方改革」として称賛した記事はひとつもありません。当たり前と言えば、当たり前です。時短や休業をしている中小企業の経営者に聞いても、「人手不足だから仕方がない」という本音を答えるだけで、大手企業のように、「家族や友人との時間を大切にしてもらう」などという美辞麗句を並び立ててくれないからです。中小企業にそんな余裕はありません。

l  なお、「人手不足」については、「AIやロボットで賄えばよい」という勇ましい言説もみられますが、少なくとも半世紀は続くと見られる日本人の人口減少のインパクトを相殺できるほど、AI化やロボット化が進むわけではありませんし、仮に進んだとしても大きな問題が残ります。日本経済が直面している問題は、単なる「人手不足」ではないからです。

l  じつは、支える担い手である「生産年齢人口(15歳~64歳)」よりも、支える対象である「老年人口(65歳以上)」が多いという構造問題が最大の難点です。百歩譲って、AIやロボットで「人手不足」を解消できたとしても、彼らは税金や社会保険料を支払ってくれるわけではありませんから、「生産年齢人口」が「老年人口」よりも少ないという構造問題は解決されません。少子高齢化が進む中で、年金をどう維持するか(社会保障の問題)、健康保険をどう維持するか(医療費の問題)、コミュニティをどう維持するか(限界集落の問題)は全く解決されず、放置されることになります。

l  したがって、「AIやロボットで賄えばよい」あるいは「人手不足の今こそ技術革新のチャンス」などという政策論は、「木を見て森を見ない」政策であるということになります。個別企業の経営論として、AI化やロボット化を進めることは必要であり、不可欠な戦術になるでしょうが、マクロの経済政策として論じるのは、宗教の類に近いというしかないのです。

l  このように、マスコミ記事の信憑性は落ちています。その象徴は、年末に話題となった2017年「新語・流行語大賞」でトップテンに選ばれた「フェイクニュース」の扱いではないでしょうか。「フェイクニュース」の定義について、朝日新聞社が発行している『知恵蔵』は「主にネット上で発信・拡散されるうその記事を指す」と解説しました。しかし、この定義こそが「フェイクニュース」です。「フェイクニュース」という言葉の本家本元であるトランプ米大統領は、CNNや大手新聞等の既存マスコミを指して、「フェイクニュースだ!」と罵倒していました。日本で言えば、朝日新聞やTV報道を「フェイクニュース」として罵倒したのであって、ネットを批判したわけではありません。加計学園の報道でも問題になりましたが、マスコミは、自分たちの描いたストーリーと合わない場合は報道しないか、内容を捻じ曲げてしまうのです。経営者にとって2018年は、こうしたフェイクニュースに騙されないで、経営戦略を練ることが求められる年になるでしょう。
金融危機, 証券取引所, トレンド, シンボル, 矢印, 方向, ダウン, 低迷
【Timely Report】Vol.75(2018.1.9)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事
将来への不安を解消せよ!」も参考になります。

外国人と入管の関係に興味のある方は ➡ 全国外国人雇用協会 へ
移民に関する国際情勢を知りたい方は ➡ 移民総研 へ

↑このページのトップヘ