外国人経済研究所

外国人と経済の関係を解き明かしていきます。

タグ:人手不足

l  無責任な経済学者やエコノミストは、未だに「人手不足は賃上げすれば解決する」と主張していますが、経営の現場には、「量(労働量)」と「価格(賃金)」以外にも大事な変数があります。それは「質(サービスの品質)」です。

l  建設現場がわかりやすい事例です。建設業の就業者数は1997年の685万人をピークに、2017年には498万人と3割弱も減少。恒常的な人手不足に見舞われています。レオパレス21のアパートでは屋根裏の界壁がないことで世間を賑わし、ダイワハウスでも約2000棟の施工不良問題が発覚しましたが、これらは特殊な例外ではありません。人手不足のため、1人の現場監督が2桁を超える現場を担当している中、工事に忘れや雑な個所が目立つようになり、工事の不具合や不手際が年中発生するようになっただけでなく、建設現場における死亡事故も増えています。業界関係者は、「最近2年間に建てられた物件は買うな」と身内には囁いています。

l  人手不足は質の低下・劣化を生み、将来のリスクを膨張させ、競争力を減殺していきます。単に「価格(賃金)」だけで解決する問題ではないのです。


【Timely Report】Vol.450(2019.7.18号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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l  最近、「人手不足は労働条件が酷い会社の泣き言だ」とか、「人手不足を解消したいなら賃金を上げればいい」という現実を無視した短絡的な議論が幅を利かせています。そういう論者たちは、佐賀県に行き、昭和自動車の社長に対して、自説を唱えていただきたいと思います。

l  昭和自動車は、佐賀県内で運行するバス26路線の再編を検討しています。バス運転手の3割以上が60歳を超えており、若手の免許保有者の補充も見込めません。50万円の入社祝い金や免許の取得支援などを講じて、年に4050人を雇っていますが、人数の出入りはトントン。今後の高齢者の引退には耐えられないと見て、現状の路線維持は難しいという経営判断です。

l  自治体が赤字分を補助金で補填する路線であっても、「今回の件は、人手の問題で、経営統合などではなかなか解消しにくい」と社長は語っています。佐賀県知事は、「賃金を上げれば解決する」と主張する識者たちに声掛けして、昭和自動車の代わりに路線バスを運営してもらうべきです。彼らの説によれば、賃上げすれば生産性が向上して問題は雲散霧消するはずですから。

【Timely Report】Vol.414(2019.5.28)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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l  先週決議された「骨太方針」には、2019年10月の消費税率10%引き上げによる景気の落ち込みを回避するための対策が明記されました。安倍政権は、「それほど景気は良くない」という現実を認識しているのだと思います。

l  2018年1~3月期の国内総生産(GDP)は、実質で前期比▲0.2%。2015年10~12月期以来、9四半期ぶりのマイナス成長でした。野菜やガソリンなど身の回り品の値上がりで個人消費が低調だったほか、住宅投資が3四半期連続で落ち込み、設備投資も▲0.1%と6四半期ぶりにマイナス。生活実感に近い名目GDPを見ると▲0.4%、年率で▲1.5%の惨憺たる状況です。

l  帝国データバンクの景気動向調査(4月)では、4年10カ月ぶりに全業界で景況感が悪化しました。アベノミクスに対する評価も、「先行きが暗い」「内需がまったく回復していない」「働き方改革や賃上げを中小企業にも求めるのは無理がある」など、人手不足に苦しむ中小企業の間で辛口の評価が多く、62.4点と昨年より0.7点下がっています。だからこそ安倍政権は、「特定技能」という新機軸を打ち出さざるを得ないのです。
起業家, アイデア, 能力, ビジョン, ターゲット, マーケティング, 計画
【Timely Report】Vol.185(2018.6.19)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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l  2025年問題」と呼ばれる難問があります。2025年は人口の多い「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になる年。後期高齢者が増えれば、それに比例して要介護者も増えます。各地方公共団体も人材確保に動き始めました。

l  介護事業者の人手不足は本当に深刻。特別養護老人ホームは、割安なので入所希望者が多いのですが、所定の職員数が確保できないため、受け入れられないというケースが頻発しています。全産業の平均月給が304,300円なのに、訪問介護員の平均月給は198,486円であり、経済評論家は「人が集まらないのであれば、賃金を上げるべき」と断言し、経営者を厳しく批判します。

l  しかし、日本における介護ビジネスは、「介護保険」という枠組の中で成り立つ半官営事業。国が商品の中身と価格を決めている以上、民間企業としての知恵の絞りどころはコストカットのみ。賃金を上げさせたいのなら、介護保険料を引き上げ、保険料の支払年齢を40歳から30歳に引き下げた上で、国が支払う介護価格を引き上げるしかありません。そういう点に触れないで、すべて民間企業の責任に擦り付けるというのは卑怯な論法です。

【Timely Report】Vol.372(2019.3.21)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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l  富裕国だったベネズエラが大変なことになっています。「21世紀の社会主義」を掲げ、賃上げや所得補填などで富裕層の富を貧困層に分配したところ経済が破綻。生活に困窮した人々が「移民」となって隣国に押し寄せています。

l  ベネズエラの惨状を見た韓国の主要紙が「韓国もベネズエラの二の舞になる」として文在寅政権の経済政策を大批判。経営の現場を無視した賃上げ政策の撤回を求めています。「最低時給1000円」を掲げる「所得主導成長論」が想定していた「賃金増➡雇用増➡消費増➡業績好転」というシナリオは実現せず、「賃金増➡雇用減➡消費減➡業績悪化」に陥ったと指摘しています。

l  じつは日本も韓国と同じ。「所得主導成長論」を掲げて、「賃上げすれば景気は良くなる」という前提で経済政策が運営されています。経営の現場を無視し、「物価が上がれば景気は良くなる」「時短をすれば生産性は上がる」「人手不足になれば経済は良くなる」という勘違いの中で、誤った賃上げ政策が処方されれば、経営の現場が疲弊するのは必至。20年後に日本が韓国やベネズエラのようになっていないことを切に望みます。
ドル, お金, 緑, ファイナンス, 金融, ビジネス, 成功, 投資, 現金
【Timely Report】Vol.240(2018.9.5)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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