外国人経済研究所

外国人と経済の関係を解き明かしていきます。

カテゴリ: 労働市場

l  留学生の大量失踪事件は、じつは東京福祉大学が初めてではありません。2001年には酒田短大で留学生の不法就労が事件化し、七尾短大でも問題が露見しました。2002年には萩国際大で風俗店での不法就労が発覚。2004年に城西国際大に関して「幽霊学生」の疑惑が報じられ、2011年には青森大で大量除籍が問題視されるなど、過去から類似の問題は指摘されてきました。

l  ただし、過去の類似事件においては、あくまでも個別の大学の問題として処理されたため、「留学生30万人計画」の是非について、大きな疑問を呈した騒ぎにはなりませんでした。今回の東京福祉大学は異なります。

l  文科省は東京福祉大に対し、新規の学部研究生への在留資格(留学)の付与を認めない方針を示しました。「留学生30万人計画」の方針の下で、文科省が大学に対して留学生受け入れの制限を求めるのは初めてです。文科省は、「30万人」という数値目標が達成されたこの時点で、「留学生の数の増大」から「留学生の質の吟味」という方針に舵を切ったと考えるべきでしょう。「留学生30万人計画」の終焉です。留学生ビジネスは大転機を迎えます。

l  「外国人」を巡る議論を大別すると、嫌いだから排斥するという「感情論」、人手不足だから必要という「算盤論」、かわいそうだから助けるべきという「人道論」の3つがあり、それぞれが相容れないところで論争しています。

l  ただし、冷徹に俯瞰すれば、日本経済を支えている製造業は、海外各国に販社や工場を構えて売り上げや利益を上げているわけであり、そこで働いているかなりの数の日本人は、現地では「外国人」です。また、その製造業の商品を買っていただいているお客さまは「外国人」です。また、日本人が依存しているエネルギーを輸入している先には「外国人」がおり、食卓を彩る各種の食材も「外国人」から購入しているものが数多くあります。

l  「外国人」との係わりを完全否定することはできません。その現実を直視した上で、「外国人」との距離の取り方を決め、どのようなスタンスと方法論で「外国人」とお付き合いするのかを議論すべきです。オール・オア・ナッシングの結論はあり得ません。その意味ではロシアやドイツのように、言語と法律と歴史でハードルを設けるというのは、ひとつの処方箋だと思います。

l  5月31日、人材派遣会社の社長が、留学生や技能実習生7人を埼玉県入間市のケーキ工場などに派遣して、不法就労させたとして逮捕されました。今年3月、7人が工場から帰宅する際に、警官から職質を受けて不法就労が発覚し、逮捕されたことが切っ掛けだったと報じられていますが、留学生の不法就労が職質でバレたとすれば、「毎日8時間働いています」とか「学校には通っていません」と回答したということなのかもしれません。いずれにしても、職質リスクは大きく、不法就労は必ずバレると覚悟すべきです。

l  「製造業派遣」の摘発は今後も続くと思われますが、今回の事件でも、ケーキ工場の工場長や経営者は逮捕されていないようです。昨年、派遣先の建設会社の社長が逮捕されたものの、暴力団絡みだったこともあり、未だに派遣先の逮捕は例外扱いなのかもしれません。しかし、取引実態を見れば、強い立場にある派遣先が、不法就労という実態を黙認しながら、リスクのすべてを派遣会社におっ被せているケースがほとんど。派遣先が逮捕されるようにならなければ、不法就労の温床である「製造業派遣」はなくなりません。

【Timely Report】Vol.451(2019.7.19号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事「取り調べの罠に気を付けましょう!」も参考になります。

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移民に関する国際情勢を知りたい方は ➡ 移民総研 へ

l  無責任な経済学者やエコノミストは、未だに「人手不足は賃上げすれば解決する」と主張していますが、経営の現場には、「量(労働量)」と「価格(賃金)」以外にも大事な変数があります。それは「質(サービスの品質)」です。

l  建設現場がわかりやすい事例です。建設業の就業者数は1997年の685万人をピークに、2017年には498万人と3割弱も減少。恒常的な人手不足に見舞われています。レオパレス21のアパートでは屋根裏の界壁がないことで世間を賑わし、ダイワハウスでも約2000棟の施工不良問題が発覚しましたが、これらは特殊な例外ではありません。人手不足のため、1人の現場監督が2桁を超える現場を担当している中、工事に忘れや雑な個所が目立つようになり、工事の不具合や不手際が年中発生するようになっただけでなく、建設現場における死亡事故も増えています。業界関係者は、「最近2年間に建てられた物件は買うな」と身内には囁いています。

l  人手不足は質の低下・劣化を生み、将来のリスクを膨張させ、競争力を減殺していきます。単に「価格(賃金)」だけで解決する問題ではないのです。


【Timely Report】Vol.450(2019.7.18号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事
アベノミクスには期待できない!」も参考になります。

外国人と入管の関係に興味のある方は ➡ 全国外国人雇用協会 へ
移民に関する国際情勢を知りたい方は ➡ 移民総研 へ

l  日本語学校修了者の7割以上に対して、日常会話レベルの日本語能力試験に合格することを求めることとなりました。3年連続で下回った場合は受け入れ禁止になります。具体的には、言語力を6段階で評価するCEFR(欧州言語共通参照枠)で下から2番目の「A2」レベル以上。ただ、「A2」は、日本語能力試験で言えば「N4」相当ですから、まじめに授業を受けて勉強している留学生であれば、さほど問題にはなりません。

l  問題は授業に出ない留学生。全生徒の出席率については、5割未満/1ヶ月でOUTだったのが、7割未満/6ヶ月と実質的に厳格化。1年間に入学した者のオーバースティは、半数未満までセーフだったものが、3割以上でOUTになります。さらに、出席率5割以下の留学生については、翌月末までにアルバイト先を含めて入管庁に報告する義務を課せられる見込みです。

l  授業を受けずにアルバイトをしている留学生を雇っている企業は、入管庁から目を付けられて、摘発対象になるリスクが高まります。アルバイト留学生を雇っている場合は、通学状況をこまめにチェックする必要があります。

【Timely Report】Vol.431(2019.6.20号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事
留学ビザは締め上げられる?」も参考になります。

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