外国人経済研究所

外国人と経済の関係を解き明かしていきます。

2020年08月

l  7月17日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を閣議決定。コロナ問題に翻弄される中で話題にもなりませんでしたが、「留学生の採用」という観点から見ると分水嶺となった感じがします。

l  「骨太の方針2020」における留学生採用の記述は、「ハンドブックも活用して採用プロセス及び採用後の待遇の多様化や積極的な情報発信を促し、留学生の起業を促進する在留資格を2020 年度中に措置すること等により、希望する留学生の大多数が国内で就職し、活躍できる状況の実現を目指す」という部分だけ。その一方、「骨太の方針2019」では、「重要課題への取組」という節の中で、「外国人材の受入れとその環境整備」を取り上げ、「留学生の国内就職促進」という一節だけでも、今年の倍以上の分量を割いていました。

l  真剣に将来を憂えば、外国人若年層の受入れは不可避なので、「骨太の方針2016」では「外国人留学生の日本における就職率の5割への引上げ」を明記するほど前のめりでした。しかし、留学生30万人計画を達成し、東京福祉大問題でずっこける中で、コロナでダメ押しを食らい、熱が冷めた感じです。



【Timely Report】Vol.714(2020.8.26)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report


BLOG記事
偽造在留カードが1500枚!」も参考になります。

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8月19日、名古屋市の人材派遣会社が入国審査で虚偽の書類を提出したとして、出入国在留管理庁が特定技能の外国人を支援する「登録支援機関」としての許可を取り消したことが分りました。外国人の就労拡大のため、2019年4月に新設した特定技能を巡る登録支援機関の取り消しは初めて。

 

とはいえ、報道によれば、この派遣会社は、「技術・人文知識・国際業務」で通訳などとして働く外国人の本人署名を無断で代筆し、虚偽の書類を入管庁に提出していたというのですから、本来であれば、営利目的在留資格等不正取得助長罪(入管法第74条の6)が適用されてもおかしくなかったはず。

 

登録指定機関の登録が取り消されても、特定技能のビジネスは小さいので、ダメージは大きくありません。実際、当該企業の親会社やグループ企業は登録支援機関の業務廃止届をサッサと出しました。派遣会社の経営陣は「最悪の事態は凌いだ」としてほくそ笑んでいることでしょう。営利目的在留資格等不正取得助長罪の立件が難しかったなら、派遣の中身を精査すればよかっただけ。入管には「派遣は叩けない」という裏事情でもあるのでしょうか。

【Timely Report】Vol.713(2020.8.24)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report


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l  少なからぬ経済学者は、人口減の話になると、「移民を受け入れなくとも省力化投資で賄える」とか「労働生産性を上げるためにIT投資すべき」などと軽々しく論じます。しかし、システムに詳しいわけでもなく、経営をしたこともないのに、よくもそんな戯言が言えるものです。きっと、日本企業や日本国が、どれだけIT投資で失敗してきたのかを知らないのでしょう。

l  無論、有効に活用できれば、ITもAIもロボテックスも、生産性向上に大きく寄与することは間違いありません。しかし、そのためには、導入する技術の成熟度や限界を知悉し、技術に対する社員や顧客の受容度を熟知し、経営戦略の中でどこにいつ投入するのが最も効果的なのかを見極め、コスト・プロフィットが十二分に見合うことを確認した上で、果断に実行しなければなりません。そうでなければ、コスト倒れに終わるだけです。

l  生き残る経営者は、技術の長所を知りつつも、手法やコストや時期が十分に熟すまでは、人員の増減や業務の調整で耐え凌ごうとします。「人手不足だからIT投資しよう」などという軽々しい判断で成功した企業はありません。

【Timely Report】Vol.467(2019.8.13号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事「
ブローカーには絶対に近寄るな!」も参考になります。

外国人と入管の関係に興味のある方は ➡ 
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l  「新日常」や「ニューノーマル」という言葉が飛び交っています。ビジネスにおいても、「アフターコロナは、ビフォアコロナと大きく異なる」などと講釈を垂れるコンサルタントが増えています。ある国立研究開発法人は、コロナ禍に求められるイノベーション像を仰々しい報告書にまとめて、デジタル変革を強く推奨し、外国人労働者に頼らずに、労働集約型から脱皮して、自動分別システムなどを導入することを求めました。

l  日本では、「経済危機に陥ると決まってデジタル化や機械化が推奨され、景気が回復すると忘れ去られる」というサイクルを何度も経験していますが、これも同じ運命でしょう。デジタル化にしても機械化にしても、マネジメントによる徹底的な効率化が推進されて、それでもなお届かない部分を明確化し、範囲を絞って標準化した上で導入されるからこそ効果が発揮されるもの。

l  外国人どころか日本人のマネジメントすら脆弱なのに、デジタル化や機械化を叫んでも業者の餌食になるだけです。政府のデジタル化の惨状がその証拠。求められる「ニューノーマル」は、マネジメント能力の劇的な向上なのです。

Vol.707(2020.8.7号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

  BLOG記事「入管行政:「特定活動」で留学生を雇用する!」も参考になります。
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l  岐阜県では、縫製を学ぶ技能実習生が数多くいます。ところが、このコロナショックで、百貨店や衣料品店の売上が急減し、実習先の工場で縫製の仕事が激減しています。このため、布製マスクの生産にシフトする動きが出てきました。ある実習先の社長は、「衣料品の受注キャンセルで来週には仕事が無くなる。マスクを望む地域の声に応えたい」と訴えました。

l  しかし、「技能実習」の建付けの下では、実習計画に基づく仕事しかできず、実習項目に「マスク生産」がないため、マスクを生産すれば違法行為になります。そこで、「実習生の雇用安定と地域社会への貢献につながる」として、厚生労働省や法務省などに提案し、特例措置を求めているというのです。

l  嘘にまみれた「技能実習」の欠陥が表面化しています。自民党では、「技能実習」を抜本的に改革するために、「グローバル人材共生」という概念を提示し、「人材育成マネージャー」や「企業内管理者」という在留資格を議論しているようですが、転職が認められていて労働搾取がされにくい「技術・人文知識・国際業務」の活動を広く認めるという王道も検討すべきです。

【Timely Report】Vol.662(2020.6.2号)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

  BLOG記事「在留資格:外国人材に美容師は無理?」も参考になります。
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