外国人経済研究所

外国人と経済の関係を解き明かしていきます。

2018年12月

l  しかしながら、マスコミ報道を見ると、「年末年始、休業増える 外食や住宅働き方改革で」(時事通信:2017.12.29)や「働き方改革!飲食店や携帯ショップ 元日休業広がる」(テレビ朝日:2017.12.31)など、年末年始にかけて企業が休業を増やしていることを、「家族や友人との時間を大切にしてもらう」「休業にした方が従業員の心も体も健康になる」とか「従業員が家族と過ごす時間を増やすことで、仕事への意欲を高め、人材の定着につなげたい」という美談にすり替え、「働き方改革」を称賛しています。つまり、政策の「宗教化」が進んでいるのです。

l  マスコミが「労働削減=善」というキャンペーンを展開し続ける間、政策当局者らは、自分たちの「政策の正しさ」を実感できますから、政策の見直しは不要になります。じつは、自分たちが振り付けしたとおりに、マスコミが躍ってくれているだけですから、「政策の正しさ」が立証されているわけではないのですが、上層部からお叱りを受けることもありません。このため、「労働投入量の不足による諸問題の表面化」という呪いの恐ろしさに気付いて、経済政策を方向転換するまでには、かなりの歳月を要するでしょう。

l  実際、大晦日は、「テング酒場」等を運営するテンアライドが120店を一斉休業にしました。ロイヤルホストは全国220店舗のうち9割以上になる209店舗で元日の営業を取りやめ、天丼専門店「てんや」でも200店舗のうち7割以上を休みにしました。大戸屋も直営店146店舗のうち80店舗で休業。コンビニでも「セイコーマート」が過半数の店舗で元日休業に踏み切っています。大和ハウス工業は1/3までの住宅展示場240カ所の営業をすべて休止させ、三越伊勢丹が初売りを1/2から1/3に後ズレさせたほか、携帯電話各社でも販売店を自主休業させていると報じられました。

l  じつは、上記のような「休業」の動き(営業時間短縮)は、地方工場や中小飲食において、かなり前から広がっています。体力がない企業は、正社員を昇給させて、その分を主力商品の値段に上乗せするのではなく、供給を絞る戦略を選択し、24時間稼働を16時間に短縮したり、「夏休み」と称する休業で対応してきました。しかし、こうした中小企業における操短や休業を取材して、「働き方改革」として称賛した記事はひとつもありません。当たり前と言えば、当たり前です。時短や休業をしている中小企業の経営者に聞いても、「人手不足だから仕方がない」という本音を答えるだけで、大手企業のように、「家族や友人との時間を大切にしてもらう」などという美辞麗句を並び立ててくれないからです。中小企業にそんな余裕はありません。

l  なお、「人手不足」については、「AIやロボットで賄えばよい」という勇ましい言説もみられますが、少なくとも半世紀は続くと見られる日本人の人口減少のインパクトを相殺できるほど、AI化やロボット化が進むわけではありませんし、仮に進んだとしても大きな問題が残ります。日本経済が直面している問題は、単なる「人手不足」ではないからです。

l  じつは、支える担い手である「生産年齢人口(15歳~64歳)」よりも、支える対象である「老年人口(65歳以上)」が多いという構造問題が最大の難点です。百歩譲って、AIやロボットで「人手不足」を解消できたとしても、彼らは税金や社会保険料を支払ってくれるわけではありませんから、「生産年齢人口」が「老年人口」よりも少ないという構造問題は解決されません。少子高齢化が進む中で、年金をどう維持するか(社会保障の問題)、健康保険をどう維持するか(医療費の問題)、コミュニティをどう維持するか(限界集落の問題)は全く解決されず、放置されることになります。

l  したがって、「AIやロボットで賄えばよい」あるいは「人手不足の今こそ技術革新のチャンス」などという政策論は、「木を見て森を見ない」政策であるということになります。個別企業の経営論として、AI化やロボット化を進めることは必要であり、不可欠な戦術になるでしょうが、マクロの経済政策として論じるのは、宗教の類に近いというしかないのです。

l  このように、マスコミ記事の信憑性は落ちています。その象徴は、年末に話題となった2017年「新語・流行語大賞」でトップテンに選ばれた「フェイクニュース」の扱いではないでしょうか。「フェイクニュース」の定義について、朝日新聞社が発行している『知恵蔵』は「主にネット上で発信・拡散されるうその記事を指す」と解説しました。しかし、この定義こそが「フェイクニュース」です。「フェイクニュース」という言葉の本家本元であるトランプ米大統領は、CNNや大手新聞等の既存マスコミを指して、「フェイクニュースだ!」と罵倒していました。日本で言えば、朝日新聞やTV報道を「フェイクニュース」として罵倒したのであって、ネットを批判したわけではありません。加計学園の報道でも問題になりましたが、マスコミは、自分たちの描いたストーリーと合わない場合は報道しないか、内容を捻じ曲げてしまうのです。経営者にとって2018年は、こうしたフェイクニュースに騙されないで、経営戦略を練ることが求められる年になるでしょう。
金融危機, 証券取引所, トレンド, シンボル, 矢印, 方向, ダウン, 低迷
【Timely Report】Vol.75(2018.1.9)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事
将来への不安を解消せよ!」も参考になります。

外国人と入管の関係に興味のある方は ➡ 全国外国人雇用協会 へ
移民に関する国際情勢を知りたい方は ➡ 移民総研 へ

l  遅ればせながら、あけましておめでとうございます。平素、全国外国人雇用協会の活動にご理解をいただき、感謝しております。今年もよろしくお願い申し上げます。今号は、新春でもございますので、普段のTimely Reportと趣向を変えて、2018年において、日本経済がどう展開するかという点について、報道や統計などの事実を踏まえながら、当協会による予測情報をお届けいたします。皆さまの経営のご参考になれば幸いです。

l  まず、足元の日本経済を確認しますと、201711月時点における完全失業率が2.7%と24年ぶりの低水準になったことや、有効求人倍率が1.56倍と44年ぶりの水準に上昇したこと、さらに加えて、新規求人倍率が2.37倍で過去最高となったことが端的に表しているように、日本国内は完全雇用の状態になっており、経営者や雇用者からみると、「人手不足」は危機的な水域に入っています。

l  こうした中、多くの経営者や雇用主の主たる関心は、「売上拡大」や「新規市場への進出」という攻めの一手ではなく、「円滑な採用」「離職の抑止」「雇用トラブルの回避」という守りの諸施策に向かっており、「安定的で健全な人手の確保」という「生き残る企業であるための不可欠な経営基盤」のディフェンスに費用と時間を割き、雇用問題に日々心を砕かざるを得ない環境に置かれています。

l  ところが、政策当局者らは、この単なる「人手不足」を、「アベノミクスの成果」として自画自賛し、「成功事例」としてのプラス面しか見ようとしていません。しかし、その実態は、「少子高齢化の加速と働き盛り人口の減少」にもたらされた表層的な現象にすぎないのです。政治家としてのポジショントークであれば理解できるとしても、経済政策を立案し実行する立場の政策当局者自身が、これから少なくとも半世紀は続くと見られる日本人の人口構成の推移がもたらしている構造的な「人手不足」を、「自らの政策効果の発現」として高らかに吹聴しているようではお先が知れています。

l  実際に、現実に適用されている経済政策は、「物価が上がれば、景気が良くなる」という、もはや宗教の域に達した思い込みに基づいており、「demand-pull(需要が増大することによる物価上昇)」と「cost-push(コストが増大することによる物価上昇)」の違いを峻別することすらなく、物価上昇を追い求める「インフレ教」に堕落しています。

l  需要が増大し、売上が増大する中で、消費者に値上げが許容される経済の地合いであれば、利益の増大に伴って賃金上昇のコストも吸収されていく筋合いにありますが、デフレ経済に慣れてしまった消費者が値上げに「NO」と言い続ける中で、経営判断としての値上げは極めて困難です。そういう状況下、海外市場に活路を求めることができる大企業はともかくとして、国内市場にしか拠る術がない国内企業においては、賃金上昇のコストアップが企業体力を着実に蝕んでいます。

l  201779月のGDPを見ても、国内市場の大きさを示す「民間最終消費支出(名目・持ち家の帰属家賃を除く)」の前年比は+1.0%にすぎず、実態的には、前年度における落ち込みを取り戻したに過ぎません(201679月前年比▲1.1%)。国内市場が活況を呈していないことは、201579月に73.6兆円だった「民間最終消費支出」が201779月になっても73.6兆円にとどまっているという事実が雄弁に物語っています。念のため、直近1年間の前々年比を示せば、20161012月+0.1 ➡ 201713月+0.1 ➡ 46月+0.8 ➡ 79▲0.0%ですから、一向に増大していないことが確認できます。

l  そんな中で、労働生産性を向上させる議論に至っては、「労働時間を減らせば、労働生産性は向上する」という明らかに誤った小学生レベルの算数を、政策当局者らが恥ずかしげもなく公言しており、「労働時間の削減=労働生産性の向上」という恒等式を呪文のように唱える姿は滑稽でもあり、空恐ろしくもあります。

l  確かに、労働によってもたらされる企業の付加価値(≒粗利益)が、労働時間の投入量にまったく左右されないのであれば、労働投入量を削減すればするほど、労働生産性は上昇します。しかし、その論理は、家に帰ってから、毎日4時間猛勉強した結果、70点だった試験の点数を77点に引き上げた(10UP)子供に対して、「これからは毎日2時間だけ集中して勉強しなさい」と指導すれば、「これまでの半分(4時間➡2時間)の勉強時間だから、10UP2倍の20UPになって、試験結果は84点になるはず」と妄想することと同義です。

l  勉強しなくなれば、その分成績が落ちるだけというのは自明の理ですから、「労働時間の削減=労働生産性の向上」という呪文は、「労働投入量の不足による諸問題の表面化」という呪いになって、いずれ企業や経済のパフォーマンスに跳ね返ってきます。
金融危機, 証券取引所, トレンド, シンボル, 矢印, 方向, ダウン, 低迷
【Timely Report】Vol.75(2018.1.9)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

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将来への不安を解消せよ!」も参考になります。

外国人と入管の関係に興味のある方は ➡ 全国外国人雇用協会 へ
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l  201711月時点における完全失業率が2.7%と24年ぶりの低水準になったことが端的に表しているように、日本国内は完全雇用の状態になっており、経営者や雇用者からみると、「人手不足」は危機的な水域に入っています。ところが、日本銀行は、物価上昇率が目標の2%に達しないのは「人手不足の度合いが不十分だからだ」と公言し、当局は、「雇用供給の削減」という愚かな政策を大々的に推進しようとしています。「人手不足」の上に、さらに「人手不足」を加速させようというのです。

l  「電通ショック」に象徴される残業廃止・労働時間削減の波は止まるところを知らず、深刻な「人手不足」をさらに深刻化させていますが、アルバイトや派遣という弾力的な労働力を「正規労働化」という名目の下、非弾力的にしようとしています。さらに、人手不足を緩和してきた留学生アルバイトすらも、「28時間超の撲滅」という正義の旗の下、大々的に退治しようとしています。これらの結果、2018年は、「安定的で健全な人手の確保」に失敗した数多くの企業が極めて苦しい難局に直面する年になると予測されます。
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【Timely Report】Vol.75(2018.1.9)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事
将来への不安を解消せよ!」も参考になります。

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【全国外国人雇用協会BLOG】
 l  外国人留学生がいなければ、コンビニは24時間営業を維持できません。全国のコンビニでは、留学生が4万人働いており、東京の深夜帯だと6~7割の店舗で外国人が就業しています。本来、留学生は「勉強」が本文であり、「就労」することは不可。アルバイトは「裏口=資格外活動」で特別に認めるという建付けです。世界に通用する日本の製造業を代表するのがトヨタなら、日本の非製造業を代表するのはコンビニ。しかし、そのコンビニを支えているのが、「裏口入学の留学生」だとすれば悲しい限りです。

l  日本のコンビニは、公共料金支払も、小包も、カフェも、チケットもある世界的に珍しい小売りの形態。コンビニが実践している「単品管理」は、欧米のビジネススクールが取り上げるほどの高度なマネジメント手法でもあります。そもそも立法当時、「人文知識」という在留資格は、日本人の大学卒が就労するような仕事という捉え方でした。「販売=単純作業」という紋切り型の解釈を止め、以前のように「技術・人文知識・国際業務」でコンビニの就労を認めることこそ、入管に求められていることではないでしょうか。
建物, 暗い, 泊, 利便性, ストア, ショップ
【Timely Report】Vol.197(2018.7.5)
より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report

BLOG記事
コンビニは入管戦略を誤った?」も参考になります。

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【全国外国人雇用協会BLOG】
 l  入国管理法の表面しか眺めていない論者は、「特定技能」に、「外食」が入り、「コンビニ」が外れたことをもって、「外食の勝ち・コンビニの負け」という短絡的な記事を書いていますが、入管行政の現場はもう少し複雑です。

l  外食業界を所管する農林水産省は、「受け入れるのは店長・チーフレベルの人材」と宣って、ハードルを上げているらしく、外食業の業界団体「日本フードサービス協会」はそれに盲従して、愚かにも「アルバイトのような存在ではなく、一定レベル以上の人材を集めていく」などと公言し、「店長レベルの能力を持つ人材を求めていく方針」と報じられています。

l  外食業界は自殺する気でしょうか。「店長業務」ならば、本来「技術・人文知識・国際業務」でカバーできる領域であり、かつては店長候補やアルバイト管理で「人文知識」や「国際業務」の許可が出ていました。しかし、最近は、上記の議論の煽りを受けて許可が難しくなっています。「特定技能=店長業務」になれば、まずます「技術・人文知識・国際業務」では許可が出ません。今からでも遅くないので、「特定技能」から脱退したほうがよいと思います。
レストラン, ワイン, メガネ, 提供, 夕食, 祝賀, ガラス, テーブル

【Timely Report】Vol.297(2018.11.27)より転載。詳しくは、このURLへ。http://nfea.jp/report


BLOG記事「
野党は『特定技能』に反対?」も参考になります。


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